図解
※記事などの内容は2018年5月31日掲載時のものです
最高検は3月、司法取引の運用をめぐり「裏付け証拠が十分にある場合でなければ取引を成立させない」とする方針を公表した。これを基に、架空の事件を想定したシミュレーションを行った。
◇【シーン1】申し入れ受け協議開始
東京都内の中堅メーカーに勤める経理部長Aは、会社の金約1000万円を着服したとして業務上横領容疑で警察に逮捕された。数日後、Aは弁護人を通じ「B社長の指示を受け、法人税の脱税に関わった。司法取引を利用したい」と検察官に申し入れた。
脱税について把握していなかった検察官は、Aの弁護人が「裏帳簿の保管場所を知っている」と説明していることから、「司法取引で重要な証拠を得られる見込みがある」と判断。警察とも話し合い、弁護人同席の下で協議することを決めた。
◇【シーン2】証拠押収、不起訴で合意
協議開始後、検察官はAの聴取を行い、供述通りの場所から裏帳簿を押収した。検察官は「脱税の裏付け証拠は十分にある」と考えた。一方で、警察は横領の捜査も進め、被害は約1000万円にとどまることが分かった。
検察官は、Aが弁済を予定している点などを考慮。捜査協力の見返りとして横領を不起訴とする案を示した。Aは受け入れ、弁護人も同意したことから取引が成立し、内容を記した合意書面が作成された。Aはその後、脱税の具体的な手口を語った。
◇【シーン3】法廷で取引明らかに
Aの捜査協力によってBは法人税法違反罪で起訴された。Bの公判では、Aが検察側の証人として証言することになった。その際、司法取引の合意書面が裁判所に提出され、取引の事実が明らかになった。
この間、地検の検察官は協議開始や取引成立を判断する際、上級庁の高検、最高検に報告を上げ、指揮を受けた。
最高検幹部は取材に対し、「さまざまなパターンでの活用が想定される。しっかりと準備し、失敗しないよう慎重に運用したい」と話した。
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