図解
※記事などの内容は2017年4月29日掲載時のものです
従来の捜査、公判、弁護活動を大きく変える可能性のある司法取引が、6月1日から始まる。検察当局は当面、特捜部が手掛ける経済事件での活用を想定しており、弁護士が行うセミナーが活況を呈すなど企業側の関心も高い。
司法取引の導入を盛り込んだ刑事司法改革関連法が2016年5月に成立し、最高検は同6月に専門部署を設置。今年3月、「国民の理解を得られる事案でなければならない」とする運用方針を公表するなど準備を進めてきた。
司法取引が適用できる犯罪には、薬物や銃の密売が含まれる。しかし、検察幹部の1人は「密売では証拠隠滅が徹底されている。密売人の証言も簡単には信用できず、司法取引を活用するハードルは高い」と指摘する。
こうしたことから、最高検は、特捜部が摘発してきた贈収賄や横領、粉飾決算など経済事件での活用を「第一号」に想定。専門部署のトップに元東京地検特捜部長を据えた。
一方、企業側の代理人を務めることが多い弁護士らは制度の周知に努めている。元検事の熊田彰英弁護士は今年1月、企業の法務担当者らを対象にセミナーを2回開き、計約60人が参加した。
熊田弁護士は真剣に聞き入る担当者らを前に、「司法取引は経営陣をターゲットとした制度。自社で使う場合もあれば、他社に使われて摘発される可能性もある」と指摘。「不祥事が起きた場合は早急に社内調査を行い、対応する必要がある」と強調した。
参加した東証1部上場の機械メーカーで監査部門の責任者を務める50代男性は「社内で対応を検討していなかったので、今後問題提起したい」と話した。
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