図解
※記事などの内容は2019年4月18日掲載時のものです
他人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った目の難病患者への移植手術をしていた理化学研究所や神戸市立医療センター中央市民病院などのチームが18日、東京都内で開かれた日本眼科学会の総会で、術後1年間の経過観察で腫瘍化や網膜剥離など重大な合併症はなかったと発表した。チームは治療法としての一定の安全性が確認されたと説明している。
理研の高橋政代プロジェクトリーダーは「結果は良好。予想外のことはほとんど起こらず、目的は達成された」と話している。
移植を受けたのは、網膜組織が傷んで視力が落ちる「滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性」の患者で60~80代の男性5人。移植した細胞は生きたまま網膜の下に定着し、欠損した組織の一部で修復効果も見られた。矯正視力は全ての患者で低下せず、1人は0.03から0.05に上がったという。ただ、治療薬の投与も続けており、移植の効果かどうかは「判断が難しい」としている。
一方、患者1人は網膜の下に微量の水が出る軽い拒絶反応が出たが、ステロイドの注入で抑えた。「拒絶反応は局所的なコントロールで抑えられるという予想通りの結果」(高橋氏)といい、患者5人について3年間の追跡調査を続ける。
チームは2017年、拒絶反応を起こしにくい特殊な免疫の型を持つ人のiPS細胞から網膜の細胞を作り、移植する世界初の手術を実施した。14年にも患者自身のiPS細胞を使った移植を行っていた。
高橋氏は今後の研究について「実用化に向けてはまだ7合目。網膜に異常を来す他の目の難病でも移植手術の臨床研究や治験を行い、効果を確かめたい」と話している。
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