図解
※記事などの内容は2018年4月17日掲載時のものです
ヒトの万能細胞を脳の前段階の組織に変え、マウスの脳に移植して成長させることに初めて成功したと、米ソーク研究所のチームが16日付の米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー電子版に発表した。移植した組織はマウスの血管や脳神経とつながり、基本的な機能をほぼ確認できた。
実験は認知症や統合失調症などの仕組みを解明し、新薬を開発するのに役立つという。将来は脳卒中や交通事故などで脳の一部が損傷した患者に対し、ヒト万能細胞から作った脳組織を移植する再生医療の実現につながると期待される。
これまでは、不妊治療で余った受精卵から作る胚性幹細胞(ES細胞)や皮膚細胞に遺伝子群を導入して作る人工多能性幹細胞(iPS細胞)を脳の前段階の組織に変え、実験容器で立体的に培養して脳の成長過程を調べる研究が行われてきた。しかし、ある程度大きくなると内部の細胞に酸素や栄養が届かず、死滅する問題があった。
ソーク研チームはヒトES細胞を脳の前段階の組織に変えた後、免疫不全の成体マウスの脳に移植。約1週間後からマウスの血管が入り込んで成長を始め、ヒトの神経細胞が成熟したほか、神経細胞を支援する「グリア細胞」ができた。ヒトの脳組織は蛍光たんぱく質で見分けるようにし、神経細胞が活動して電気が流れる様子などを観察した。移植した組織は最長で8カ月弱、生きた状態を維持した。
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