図解
※記事などの内容は2017年5月13日掲載時のものです
絶滅危惧種に指定されているアマミトゲネズミの卵子と精子を、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って作製したと、宮崎大などの研究チームが発表した。絶滅危惧種の生殖細胞をiPS細胞を使って作製したのは世界で初めて。本多新・同大研究員は「絶滅に備える手段の一つとして有効」と話している。論文は12日付の米科学誌サイエンス・アドバンシーズに掲載された。
アマミトゲネズミは、鹿児島県・奄美大島にのみ生息する国の天然記念物。褐色でとげ状の毛を持つ。
研究チームは、別の調査で捕獲されたアマミトゲネズミからiPS細胞を作製し、マウスの胚(成長した受精卵)に注入。胚をマウスの子宮に移植し、アマミトゲネズミの細胞が全身に混ざった子を誕生させた。子の卵巣と精巣を調べたところ、わずかだがアマミトゲネズミの卵子、精子が混ざっていた。
研究チームは今後、卵子と精子を受精させるなどしてアマミトゲネズミを誕生させる研究に取り組む。本多研究員は「現在の技術では難しく実現は遠いが、可能性はある」としている。
研究チームによると、海外ではサルなどの絶滅危惧種のiPS細胞が作られているが、卵子、精子にたどり着いた例はない。アマミトゲネズミで成功したのは、作製過程でマウスを使えることや、iPS細胞を作る際に受精卵により近い状態に戻ることなどが要因という。
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