図解
※記事などの内容は2019年1月16日掲載時のものです
各地の県立高校などで、教材用の模型が本物の人骨と判明する例が相次いでいる。ほとんどの場合、正確な記録がなく入手経路は不明。「かつて購入した」「寄贈されたらしい」。保管に至った経緯には謎も多いが、文部科学省は冷静な対応を呼び掛けている。
各地の県教委によると、疑いがある例も含め、人骨は少なくとも石川、福井、愛知、大分、宮崎、鹿児島の計6県16校で発見された。
発端は鹿児島市の県立鶴丸高校で、2016年7月に生物講義室の標本棚から頭蓋骨1点が見つかり、死後推定約50年の女性の骨と判明した。その後、各地の県教委などが調べたところ、他の学校でも確認された。生物の授業で使われていたとみられる例が多いが、中には「美術の授業で、デッサンのモチーフに使っていた」(鹿児島県立甲南高校)例や、「マッサージの国家試験受験資格を取る理療科の授業で使用した」(宮崎県立明星視覚支援学校)ケースもあった。
人骨はどこから来たのか。国内の医療教材メーカーは「昭和40年代までは、インドから仕入れ、大学病院などに販売していた」と打ち明ける。愛知県大府市の県立桃陵高校にあった1体には「昭和47年購入」との記録があった。
順天堂大医学部の坂井建雄教授(解剖学)によると、明治時代は各地の医学校などで、病院から提供された身寄りのない病死遺体を使った解剖実習が行われ、その骨で教育用の骨格標本が作られていた。しかし明治中期、医学校が財政難で次々と廃校になり、標本が地域の学校に寄贈された可能性があるという。
人骨があった学校には、戦前の旧制中学校の流れをくむ伝統校が多い。福井県立武生高校(越前市)もその一つで、県教委によると、「頭蓋骨は明治時代からあった」と伝えられている。大分県立高田高校(豊後高田市)では、頭蓋骨が入っていた木箱には個人名に加え「昭和10年代に寄贈」と記されていた。
ただ、多くの学校では、入手経路の詳細は不明。坂井教授らによると、適法に作られた骨格標本なら所有しても罪にはならないという。文科省教育課程課は「事件性がありそうな場合は、各教委や警察に報告するなど適切な対応を取ってほしい」と呼び掛けている。
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