図解
※記事などの内容は2020年1月31日掲載時のものです
単層の微細な筒状炭素分子「カーボンナノチューブ(CNT)」を芯として、異なる物質による2層や3層の入れ子状チューブを合成したと、東京大の丸山茂夫教授らが31日付の米科学誌サイエンスに発表した。半導体と絶縁体を組み合わせ、超微小なトランジスタとして機能することを確認。現在のコンピューターはシリコン半導体の微細加工が限界に近づいているが、これを飛躍的に小型化、高性能化する技術開発につながるという。
CNTは炭素原子が六角形の網目状に並んだシート(グラフェン)を筒状に丸めた形をしており、単層と長ネギのような多層の2種類がある。単層CNTはねじれ具合によって金属のように電気を通したり、半導体になったりする。
内側が多層CNT、外側が絶縁体の窒化ホウ素ナノチューブの2層構造物質はすでに作られていたが、丸山教授らは単層CNTで合成。さらに外側を半導体の二硫化モリブデンナノチューブで包んだ3層構造物質も合成した。
窒化ホウ素ナノチューブを合成するには約1000度に熱する必要があるが、内側の単層CNTが燃えてしまう問題があった。しかし、丸山教授の研究室の項栄准教授や井ノ上泰輝助教らがアルゴンと水素のガスを使って空気を排除し、窒素とホウ素を含む化合物「アンモニアボラン」を原料として合成する方法を開発した。
丸山教授は「カーボンナノチューブを半導体として使うには単層である必要がある。トランジスタへの応用が長年期待されながら実現しなかったのは、絶縁層や電極を配置する技術が追いつかなかったためだが、これで進むと思う」と話している。
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