図解
※記事などの内容は2019年10月10日掲載時のものです
現代社会に不可欠なIT機器を支えるリチウムイオン電池。ノーベル化学賞は吉野彰さん(71)ら3人が選ばれたが、実用化に至る過程には、東芝研究開発センターエグゼクティブフェローの水島公一さん(78)ら日本人研究者の貢献があった。
リチウムイオン電池は充放電の際に電子をやりとりするプラス(正)とマイナス(負)の二つの電極と電解質で構成される。正極にコバルト酸リチウムが適していると発見し、受賞が決まった米国のジョン・グッドイナフ教授(97)と共同研究したのが水島さんだった。
水島さんは1977年、研究の行き詰まりを感じて体調を崩したこともあり、気分転換を兼ね渡英した。水島さんを招いたのは当時米マサチューセッツ工科大から英オックスフォード大に転じたグッドイナフさん。2人は石油ショック直後で、研究資金が得やすかった充電池をテーマに据えた。
当初は難航したが、それまでの研究で「土地勘があった」(水島さん)という酸化物を選ぶと、コバルトとリチウムの組み合わせが飛び抜けて良い性能を出した。水島さんは成果を論文にまとめて79年に帰国したが、「リチウムイオン電池が実用になるとは思わなかった」という。
水島さんは2016年、吉野さんと共に物質・材料研究機構から顕彰されるなど、高く評価された。グッドイナフさんの受賞決定に「さまざまな研究成果の積み上げがあり、その一部に関わることができ、共同研究者の一人として大変光栄に思う」とコメントした。
リチウムイオン電池を91年に製品として初めて世に出したのはソニーだった。開発に携わった同社の西美緒さん(77)も14年、「工学分野のノーベル賞」と言われるチャールズ・スターク・ドレイパー賞を、吉野、グッドイナフ両氏と共に受賞した。
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