図解
※記事などの内容は2019年7月9日掲載時のものです
日本人の祖先による3万年以上前の航海を再現するため、国立科学博物館などのプロジェクトが作った5人乗りの丸木舟は9日午前11時半すぎ、台湾東部から沖縄・与那国島に到着した。かいをこいで流れの速い黒潮を越え、直線で約200キロの航海に成功した。
5人は山口県在住のシーカヤックガイド原康司さん(47)や台湾の元シーカヤック競技者、宗元開さん(64)ら。うち女性は1人で、北海道在住の会社員田中道子さん(46)。
与那国島の砂浜に丸木舟を着けたこぎ手らは、出迎えた人たちと抱き合ったり握手をしたりして喜びを爆発させた。伴走船に乗ったプロジェクト代表の海部陽介・国立科学博物館人類史研究グループ長(50)は「いろんなドラマを乗り越えてきた5人の姿に胸を打たれた。祖先たちも(苦難を乗り越えて)やらなければ(沖縄の)島にたどり着けなかったと思う」と話した。
7日午後2時半すぎ(日本時間)に台湾を出発。時計や地図、コンパスを持たず、地形や星、月、太陽を手掛かりに進んだ。しばらく風が強かったが、8日から海がないだ。太陽が真上にある8日正午ごろには方角をつかめず、一時蛇行。深夜から9日未明は曇って星が見えなかったり、休んだりしてペースダウンしたが、北東へほぼ一直線に進んで到着した。
約3万年前には台湾は大陸と地続きだった。沖縄の島々への航海は、祖先が日本列島に渡った主要なルートの一つとみられるが、遺跡から当時の舟が見つかっていない。プロジェクトでは丈夫な草を束ねた舟や竹のいかだを作り、かいでこぐ実験航海を行ったが、速度が遅かった。石斧(せきふ)を使い、杉の大木から丸木舟を作るのは難しかったが、スピードが出て、黒潮を越えられることが分かった。
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