図解
※記事などの内容は2019年7月7日掲載時のものです
日本人の遠い祖先が3万年以上前に大陸から渡って来た航海を再現するため、5人乗りの丸木舟が7日午後2時半すぎ(日本時間)、台湾東部沿岸からかいをこいで出発した。国立科学博物館などのプロジェクトで、流れの速い黒潮を越えて沖縄県・与那国島を目指す。
伴走船で安全を管理し、順調なら1日半程度で到着する予定。天候や海況の悪化などで航海を中止する可能性もある。
丸木舟は杉の大木を石斧(せきふ)で切り倒し、中をくりぬいて作った。長さ約7.5メートル、幅が最大約70センチ。こぎ手はシーカヤックなどの熟練者で、男性4人、女性1人。山口県在住の原康司さん(47)がキャプテンを務め、最年長は台湾の宗元開さん(64)。水と食料は積んだが、地図やコンパス、時計を持たず、地形や星などを頼りに航行する。
台湾は約3万年前には大陸と地続きだった。出発地点は黒潮により北に流されながら東に進むことを想定して選んだ。直線距離は約200キロあり、疲れや眠気、暑さとの闘いになる見込み。
当時の舟は遺跡から見つかっていないため、再現プロジェクトはこれまで、草を束ねた舟や竹のいかだを作製。風を受ける帆はなかったとみて、手こぎでの性能を試した。2016年に草の舟で与那国島から西表島を目指した航海では、速度が上がらず途中で断念。17年に竹のいかだを台湾南東沖で試した際も遅かった。丸木舟は速く、黒潮越えが期待できるという。
プロジェクト代表の海部陽介・同博物館人類史研究グループ長(50)は伴走船に乗る前、「祖先たちがどうやって困難な海を越えたのかという謎に、初めて実証的に迫ることができると期待している」とのコメントを出した。
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