図解
※記事などの内容は2019年5月8日掲載時のものです
量子科学技術研究開発機構は8日、茨城県那珂市の那珂核融合研究所で、大型の核融合実験装置「JT-60SA」の主要な組み立て作業を報道陣に公開した。この装置はドーナツ形の真空容器内で重水素同士を超高温のプラズマにし、核融合反応を起こす。将来の核融合発電への貢献が期待される。
核融合発電はウランの核分裂反応を利用する原子力発電より安全性が高く、燃料が豊富で効率が良いとされるが、超高温のプラズマを長時間維持するのが難しい。日米欧やロシアなどは重水素と三重水素の核融合反応を利用する「国際熱核融合実験炉(ITER)」をフランス南部に建設中で、JT-60SAは補完する役割がある。
公開されたのは、ドーナツ形の真空容器の中心に直径約2メートル、高さ約7メートル、重さ約100トンの柱状超伝導コイルを挿入する作業。極低温に冷却して電気を流すと非常に強い磁場が生じる。真空容器内でプラズマを維持できる時間は100秒程度と、前身の実験装置より大幅に長くなる見込み。
JT-60SAは日本と欧州が2013年から約720億円をかけて組み立てており、来年9月に初めてプラズマを発生させる予定。那珂核融合研究所の鎌田裕副所長は、挿入した超伝導コイルは心臓部と指摘した上で、「魂を入れるところまでこぎ着けた。ITERより先進的な運転手法を開発して(ITERの次の)原型炉の設計に反映させたい」と話した。
新着
会員限定