図解
※記事などの内容は2016年10月8日掲載時のものです
東京工業大栄誉教授の大隅良典さん(71)が今年のノーベル医学生理学賞に決まった。細胞内でごみになったたんぱく質を分解し、リサイクルする「オートファジー(自食作用)」の具体的な仕組みを解明したことが評価された。
-なぜオートファジーが大事なの?
体の筋肉や神経、内臓などを構成する細胞の主成分はたんぱく質で、さまざまなアミノ酸が組み合わさってできている。肉や魚、豆腐などを食べて体に取り込むアミノ酸より、細胞内で不要になったたんぱく質をアミノ酸に分解して、再利用する方が多いんだ。
-何の役に立つの?
手足が震え、歩くのが難しくなるパーキンソン病などの神経の病気は、たんぱく質のごみが異常に蓄積して起きると考えられている。薬でごみ処理を進めれば治療できる可能性がある。増殖し続けるがん細胞の場合は、ごみ処理を妨げれば退治できるかもしれない。
-解明のきっかけは?
大隅さんの研究対象は製パンや酒造りの発酵に利用される酵母。単細胞で観察しやすく、簡単に培養できるので、昔から生物学の実験に使われてきた。
大隅さんは「ごみため」としか考えられていなかった酵母の液胞に注目し、1988年にたんぱく質が液胞に取り込まれる様子を世界で初めて顕微鏡で観察した。基本的な仕組みが人を含む動植物に広く共通することも分かった。
-気難しい先生なの?
研究仲間と酒を飲んで話すのが好き。面白い研究を目指す姿勢が慕われ、仲間が増えて研究が発展した。
-日本人の受賞が多いね
ノーベル賞は一つの研究分野の創始者に授与されることが多く、受賞まで長い年月がかかる例が大半を占める。大隅さんは「生命の基本単位である細胞に興味を持ち、人のやらない研究をやろうと思った。がん(治療)などにつながると確信して始めたわけではない」と話しており、基礎科学の重要性を訴えている。
新着
会員限定