図解
※記事などの内容は2018年12月7日掲載時のものです
【ワシントン時事】米海軍・海兵隊が世界で運用する航空機・ヘリコプターの2017会計年度(16年10月~17年9月)の10万飛行時間当たりの事故率が、5年前からほぼ倍増していたことが6日、時事通信が情報自由法に基づいて入手した資料で明らかになった。6日には在日米軍海兵隊の航空機2機が高知県沖で墜落したばかり。海軍・海兵隊航空機事故の増加傾向が数字で裏付けられた。
◇「危機的状況」
米軍では中国やロシア、北朝鮮などの脅威の高まりを受けて任務が増加する一方、予算削減のあおりで人員不足や装備品の老朽化が進む。17年には米軍全体で、訓練中の事故により80人が死亡し、戦死者数(21人)の4倍近くに上った。専門家らは「米軍は危機的状況にある」と警告する。
米軍のデータを基に時事通信が算出した結果によると、12年度に海軍・海兵隊が運用する全航空機・ヘリコプターで起きた飛行中の事故は150件。損害額や死傷者の有無に応じてクラスA~Dに分類された全事故の10万飛行時間当たりの事故率は12.38だった。最も重大とされる「クラスA」は15件発生した。
一方、17年度の事故件数は263件。事故率は24.53で、12年度からほぼ倍増した。17年度のクラスAは19件だった。事故率は12年度から5年連続で上昇した。クラスAは損害額200万ドル(約2億2500万円)以上か死者が出る事故。11年度途中に新たなカテゴリーとして追加されたクラスDは損害額2万~5万ドルと定義している。
◇危険増す悪循環
元米軍幹部は「オバマ前政権下の国防予算削減で人員が減った半面、任務は激増している」と分析。「整備は行き届かず、訓練にも十分な時間を割けない。部隊の練度は落ち、さらに事故の危険が増す」と悪循環に陥っていると指摘する。
昨年には横須賀を拠点とする第7艦隊でイージス艦の衝突事故が相次ぎ、乗組員計17人が死亡。内部調査で、乗組員の多くが定期訓練を修了せず、レーダーの基本操作や操船技術など基本技能を習得していない実態が明るみに出た。
トランプ政権は「米軍再建」を掲げ、国防予算増加を打ち出した。だが、空軍ではいまだ1000人以上のパイロット不足が続く。専門家は「米軍の即応能力低下はあまりにも深刻で、1、2年で回復を図るのは困難だ」と話している。
新着
会員限定