図解
※記事などの内容は2016年12月8日掲載時のものです
米軍と海上自衛隊が共同使用する厚木基地(神奈川県)の周辺住民らが、騒音被害を理由に国を訴えた第4次訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は8日、「自衛隊機の運航には高度の公共性がある」として、夜間早朝の飛行差し止めを認めた一、二審判決を取り消し、住民側の請求を棄却した。米軍機の差し止め請求も退け、いずれも認めない判断が確定した。
二審が認めた将来分の損害に対する賠償請求も退けた。裁判官5人全員一致の意見。過去分の約82億円の賠償は国が争わず、既に支払われている。
各地の基地訴訟では、民事訴訟での差し止め請求を不適法として「門前払い」する判決が定着。今回、公権力行使の違法性を問う行政訴訟でも自衛隊の公共性を認めた上で請求が退けられたことで、裁判を通じた軍用機の飛行差し止めは事実上不可能となった。
原告は、航空機騒音の国際基準「うるささ指数(W値)」が75以上の区域の住民約7000人。
最高裁は、住民らの騒音被害について「睡眠妨害の程度は相当深刻で、軽視できない」と言及。ただ、「厚木基地における自衛隊機の運航はわが国の平和と安全に極めて重要な役割を果たしており、高度の公共性がある」と指摘した。
その上で、自衛隊が夜間早朝の運航を自主規制している点や、防音工事への助成費用として総額1兆円超を支払っていることを考慮し、「防衛大臣の権限行使は妥当なものだ」と結論付けた。
米軍機については言及せず、飛行差し止めを認めない一、二審の判断を不服とした住民側の上告を棄却した。将来分の賠償は「あらかじめ賠償額などを明確に認定できない」として退けた。
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