図解
※記事などの内容は2019年8月7日掲載時のものです
「京都アニメーション」第1スタジオの放火殺人事件は8日、発生から3週間を迎える。京都大防災研究所は今回の火災について、発火からわずか30秒で建物の大半に煙が充満したとするシミュレーション結果を公表。「爆発音からまもなく黒煙が立ち込めた」という生存者の証言とも一致しており、猛烈な煙が脱出を困難にした状況が浮かぶ。京都府警は動機や火災のメカニズムの解明を進めている。
青葉真司容疑者(41)=殺人容疑などで逮捕状=は建物1階のらせん階段付近にバケツに入れて持ち込んだガソリンをまき、火を付けたとみられている。同研究所の西野智研准教授(建築災害安全工学)はこの付近を火元と推定し、視認した焼損状況や報道された府警の現場検証結果などを基に予測モデルに当てはめ、放火直後の熱と煙の広がり方を解析した。
解析によると、煙はらせん階段の吹き抜けから流れ込んで上昇し、出火5秒で3階に到達。15秒後には3階中に立ち込め、屋上に通じる別の階段の出口付近も覆い尽くした。煙は上から広がり、30秒後には2階より上は最高で約330度もの高温の煙で満たされた。1階は激しい炎により、出火10秒ほどで1000度に達したという。
建物2階から脱出した男性は「爆発音や『火事だ』という叫び声から15秒もしないうちに、黒い煙が上がってきた」と証言。煙は手の先も見えないほど濃く、男性は煙を吸わないよう身を低くしてベランダから飛び降りた。救助に当たった人も「猛烈な煙がすぐ噴き上り、逃げた人は服が黒くすすけていた」と話している。
亡くなった35人のうち20人は3階から屋上へ上がる階段の途中で重なるように倒れていた。充満した煙の中を突っ切る困難な状況で、有害な煙に巻かれた可能性がある。
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