図解
※記事などの内容は2019年7月23日掲載時のものです
2020年東京五輪・パラリンピックの開幕が1年後に迫る中、日本人名のローマ字表記方法が注目を集めている。河野太郎外相らが日本流の「姓-名」順を提唱する一方、慣行に反し混乱を招くとの指摘も根強い。多くの閣僚が同調せず政府内の足並みがそろわない中、民間から姓-名順を求める声も出ている。
「最も早い公的な英語表記は姓-名だった」。日本女子大の清水康行教授(日本語学)によると、幕末に締結された日米和親条約(1854年)では、日本人通訳の名前が姓-名のローマ字でサインされた。ただ、日本で刊行された英語雑誌では1880年代に入り「名-姓」表記が見られるようになり、90年代にほぼ一般化した。
こうした背景について、文化庁の国語審議会(当時)は2000年の答申で、明治の欧化主義の影響を指摘。「言語や文化の多様性」を重視して「姓-名の順が望ましい」と表明し、中学校の英語教科書で広まった。ただ政府内で見解は統一されておらず、同庁は行政機関やメディア業界などに姓-名順を推奨する通知を改めて出す方向だったが、担当者は「現在は出すか出さないかも含めて調整中」と話す。
姓-名順の指摘は民間からも。自治医科大常務理事の長谷川彰一さん(61)は約30年前、旧自治省勤務時代にパリに駐在し、不思議な光景を見た。フランスでは人名を名-姓で呼ぶが、公式文書などでは姓-名の記述も多かったという。
帰国後、この「もやもや感」は、オリンピックのたびに感じた。特に中国や韓国の選手は本国での呼び方通り姓-名で呼ばれるが、日本人選手の競技映像での字幕紹介は名-姓だった。
「東京五輪を機にはっきりさせたい」。長谷川さんは今年3月から、旧自治省時代の同期や大学・高校時代の友人らに次々とメールを送るなどし、姓-名順に直すよう呼び掛ける活動を始めた。同省同期の国会議員も取り上げるなどし、賛同が徐々に拡大したところに河野外相の発言があった。
ただ、長谷川さんは強制的な統一は不要との立場だ。「官公庁や報道では姓-名に統一すべきだが、個人のレベルでは自由でもいい。国は、東京五輪までに『日本には姓-名の原則がある』ことをはっきりさせてほしい」と話している。
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