図解
※記事などの内容は2012年12月掲載時のものです
◇国内10大ニュース
1位・第46回衆院選で自公圧勝、政権奪還
第46回衆院選が12月16日に投開票され、自民党が294議席を得て圧勝、3年3カ月ぶりに政権を奪還した。連立を組む公明党と合わせると、325議席を獲得。参院で法案が否決されても衆院で再可決できる3分の2の勢力を占めた。民主党は1998年の結党時議席を大幅に下回る57議席と惨敗し、退陣する野田佳彦首相は党代表の辞任も表明した。「第三局」勢力では、日本維新の会が54議席を獲得し第3党に。直前に「国民の生活が第一」が合流した日本未来の党は惨敗した。
自民党の安倍晋三総裁は12月26日に召集される特別国会で第96代首相に選出され、第2次安倍内閣を発足させる。首相の再登板は、戦後では吉田茂元首相以来。
写真は、自民党の石破茂幹事長(左)に拍手で迎えられる安倍総裁=12月16日夜、東京・永田町の党本部【時事通信社】
2位・尖閣・竹島で中国・韓国との関係悪化
日本と中国、韓国との間で島の領有権をめぐる対立が激化し、両国関係が悪化した。韓国とは、8月10日の李明博大統領による竹島上陸が発端となり、李大統領の「天皇謝罪要求」発言も続いて関係が冷え込んだ。日本は竹島問題を国際司法裁判所に単独提訴する準備を進めた。
中国との間では、9月11日に日本政府が尖閣諸島の国有化に踏み切ったことから中国側の反発が拡大。中国は公船を繰り返し尖閣周辺の日本領海や接続水域に送り込むとともに、反日デモを容認し、日本製品のボイコット支持など強硬な対抗措置を取った。一部のデモ参加者は暴徒化し、日系のスーパー破壊や工場放火を繰り返し、日中関係は極度に悪化した。
写真は、竹島に上陸した韓国の李明博大統領【EPA=時事】
3位・原発、一時稼働ゼロ
原発の再稼働をめぐる議論は、東日本大震災から1年が経過しても決着しなかった。5月5日には、北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)の検査入りで全50基が運転を停止。原発の発電量は1970年以来42年ぶりにゼロとなった。
一方、原発依存度の高い関西電力管内では夏場の電力供給力低下に不安が高まった。このため関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)については、安全対策の強化を条件に野田政権が運転再開を決断。原発稼働ゼロは7月に解消された。しかし、大飯以外の再稼働はめどが立たず、コスト増を理由に電気料金値上げの方針を表明する電力会社が相次いだ。
写真は、出力が止まった北海道電力泊原発3号機の状況を中央制御室のモニターで確認する運転員ら=5月5日午後11時3分、北海道泊村【時事通信社】
4位・消費増税法が成立
社会保障と税の一体改革の柱である消費増税法が、民主、自民、公明の3党合意を経て8月に成立した。2014年4月に税率を5%から8%に17年ぶりに引き上げ、15年10月には10%にする予定。財政再建への「一里塚」とされ、増収分は医療や子育てなどの社会保障に充てられる。
ただ、増税実施の可否は半年前に内閣が判断する。低所得者の負担軽減策など課題は山積。法律には、経済情勢によっては執行停止も含めた措置を講じるという「景気条項」も盛り込まれている。デフレ状況での実施には反対論も根強く、夏には参院選を控えていることから、増税の行方には不透明感も漂っている。
写真は、衆院本会議で消費増税法案が可決され、拍手する野田佳彦首相、岡田克也副総理ら=6月26日午後、国会内【時事通信社】
5位・山中教授にノーベル医学生理学賞
2012年のノーベル医学生理学賞は、体のあらゆる細胞になる能力を持つ人工多能性幹細胞(iPS細胞)を開発した山中伸弥京都大教授(50)が受賞した。日本人のノーベル賞は19人目、医学生理学賞は25年ぶり2人目。
山中さんは外科医を目指したが挫折。基礎医学に転じ、米国留学から帰国した後も苦労を重ねた。受精卵から作る胚性幹細胞(ES細胞)に着目し、皮膚などの細胞に四つの遺伝子を入れ、どんな細胞にもなれる受精卵のような状態に「初期化」することに成功。06年にマウス、07年にヒトでの作製を発表した。
iPS細胞は再生医療や新薬開発に応用が期待され、世界中で研究が進んでいる。
写真は、授賞式を終え、ノーベル賞のメダルを見せる山中教授=12月10日、ストックホルム【時事通信社】
6位・オスプレイ、沖縄に配備
米国内外で墜落死傷事故が相次ぎ、機体の安全性が懸念されている米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機が10月、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備された。日米両政府は学校、病院などの人口密集地域上空の飛行を避け、ヘリモードでの飛行を原則として米軍の施設・区域内に限ることで合意し、「安全宣言」を出した。しかし、沖縄では「合意違反」の飛行が目撃されている。オスプレイは岩国基地(山口県)やキャンプ富士(静岡県)を拠点に日本本土での低空飛行訓練が計画されている。日米両政府は航続距離と機動性に優れるオスプレイ配備で「在日米軍全体の抑止力が強化される」としている。
写真は、米軍普天間飛行場に着陸する米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ=10月1日【時事通信社】
7位・景気、後退局面に
日本経済は春以降、欧州債務危機の影響拡大による海外経済の減速を主因に低迷が続いた。実質GDP(国内総生産)成長率は4~6月期にマイナスに転じ、7~9月期のマイナス幅は前期比年率換算で3.5%に拡大。内閣府は10月、景気の基調判断で3年6カ月ぶりに「悪化」の表現を用いた。
緩やかながらも拡大局面が続いていた景気は、既に3月ごろに「山」を越え、後退局面に入ったとも指摘される。日銀は2月、「当面1%」という事実上のインフレ目標を導入して金融緩和姿勢を強化。9月、10月には、9年半ぶりとなる2カ月連続の追加金融緩和に踏み切った。
写真は、終値で8500円を割り込んだ日経平均株価を示す電光ボード=6月1日、東京・八重洲 【時事通信社】
8位・ロンドン五輪で日本勢史上最多メダル
8月12日に閉幕したロンドン五輪で、日本は史上最多38個のメダルを獲得し、国民は大いに盛り上がった。大会終了後の東京・銀座でのパレードには、主催者発表で50万人が駆け付けてメダリストに声援を送った。金メダルは7個にとどまったが、サッカー女子、卓球女子団体、アーチェリー女子団体で初のメダルを手にしたり、バレーボール女子やボクシング男子で久々のメダルに輝いたりするなど、幅広い競技で日本選手が活躍。レスリング女子の吉田沙保里、伊調馨がともに五輪3連覇の偉業を達成した。一方で、史上初の3連覇を狙った競泳平泳ぎの北島康介はメダルを逃し、お家芸の柔道男子では金メダルなしに終わった。
写真は、パレードで沿道に集まった人たちに手を振る卓球の石川佳純(左)らメダリストたち=8月20日、東京・銀座【時事通信社】
9位・東電女性社員殺害で再審無罪
1997年の東京電力女性社員殺害事件で、強盗殺人罪で無期懲役が確定したネパール国籍のゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46)に対し、東京高裁は6月7日、「第三者が犯人の疑いがある」として再審開始を決定し、マイナリさんは釈放され帰国した。被害者の体内にあった精液から、現場に体毛を残したマイナリさんとは別人の第三者のDNA型が検出されたことなどが根拠とされた。その後の鑑定で被害者の爪の付着物からも第三者のDNA型が検出されたため、検察側は10月29日の再審第1回公判で有罪主張を撤回。東京高裁は11月7日、再審無罪判決を言い渡し、確定した。
写真は、再審開始決定後に釈放されてネパールに帰国し、出迎えた母親と抱き合うマイナリさん=6月16日、カトマンズ【時事通信社】
10位・家電大手、軒並み業績悪化
2012年3月期連結決算で、パナソニック、ソニー、シャープがそろって過去最大の赤字を計上した。韓国勢などとの価格競争激化や円高で、テレビ事業が不振を極めたためだ。3社合計の赤字額は1兆6000億円超。日本の産業界をけん引してきた家電大手の落日ぶりが鮮明となった。
パナソニックとシャープは13年3月期も巨額赤字が続く見通し。いずれも大規模な人員削減などで苦境脱出を図るが、展望は開けていない。一方、地デジ移行特需の反動で収益が悪化した家電量販業界では再編が加速。ビックカメラがコジマを、ヤマダ電機がベスト電器を買収するなど、弱肉強食時代に突入した。
写真は、中間決算発表の記者会見で質問を聞くシャープの奥田隆司社長=11月1日午後、東京都中央区【時事通信社】
◇海外10大ニュース
1位・中国トップに習近平氏
5年ぶりとなる中国共産党の第18回大会が11月8日から1週間開催され、これを受けた11月15日の中央委員会第1回総会(1中総会)で、習近平国家副主席(59)が総書記に選出された。習氏は胡錦濤国家主席から最高指導者を引き継ぎ、今後10年間、中国を率いる見通し。習氏は軍トップの党中央軍事委員会主席のポストも胡氏から受け継いだ。来春の全国人民代表大会(全人代)で国家主席に就く。
習新体制は、深刻な党・政府幹部の腐敗の一掃や拡大する貧富格差の是正、抗議デモが続発している環境汚染問題の解決、減速気味の経済のかじ取りなどで困難な対応を迫られる。尖閣諸島問題で悪化した対日関係の修復も大きな課題だ。
写真は、中国共産党総書記に選出され、記者会見に臨む習副主席=11月15日、北京【AFP=時事】
2位・北朝鮮、弾道ミサイル2回発射
北朝鮮は4月13日と12月12日に、それぞれ人工衛星打ち上げと称して長距離弾道ミサイルを発射した。1年に2回の発射は異例。4月は発射直後に爆発、失敗したが、12月は通告通りフィリピン東沖へ到達した。直前には発射延期のそぶりを見せ、国際社会をかく乱。日米韓3カ国などは国連安保理決議違反と見なし、北朝鮮への制裁圧力を強める構えだが、北朝鮮はさらにミサイル発射を続け、核実験に踏み切る可能性もある。
北朝鮮は核弾頭を搭載する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を目指しているとされる。ミサイルの射程は既に米本土全域に届く1万3000キロ以上との分析もあり、国際社会は警戒を強めている。
写真は、平安北道鉄山郡の西海衛星発射場から人工衛星「光明星3」号2号機を搭載して打ち上げられた運搬ロケット「銀河3」=12月12日 【朝鮮通信=時事】
3位・米大統領にオバマ氏再選
11月6日の米大統領選で、民主党の現職オバマ大統領が共和党のロムニー前マサチューセッツ州知事を破り、再選を果たした。4年前に「変革」を公約、圧勝した当時の勢いが消えたオバマ氏は、景気回復の遅れや失業率の高止まりでロムニー陣営から批判を浴びたが、大富豪のロムニー氏を「庶民の敵」と印象付ける選挙戦略が奏功し、選挙戦を制した。
米国では2009年のリーマン・ショック後の金融危機を受けて貧富差が拡大。上下両院の多数派が異なる「ねじれ」も解消できないままで、財政問題などで共和党との激しい駆け引きが続く中、オバマ政権は2期目も難しい政権運営を迫られそうだ。
写真は、大統領選で再選を果たし、民主党の集会で支持者に手を振るオバマ大統領=11月6日、シカゴ 【EPA=時事】
4位・欧州の債務危機続く
欧州債務危機は、ユーロ圏の崩壊といった最悪の事態は回避したものの、依然としてくすぶり続けた。震源地ギリシャでは、5月の総選挙で緊縮財政反対派が躍進し、連立交渉に失敗。6月の再選挙で、ユーロ残留を目指す緊縮派が過半数を確保したものの、国際通貨基金(IMF)や欧州連合(EU)との第2次支援の交渉は年末までもつれ込んだ。
ただ、欧州中央銀行(ECB)が9月に、スペインなどの国債を無制限に買い上げる方針を表明。10月には、危機国に最大5000億ユーロの支援融資を実施できる欧州安定機構(ESM)も発足し、危機国の国債利回りはやや低下、ユーロ相場も反発に転じている。
写真は、定例理事会後に記者会見するECBのドラギ総裁=12月6日 【AFP=時事】
5位・金正恩氏、第1書記に
北朝鮮の金正恩氏は4月11日の労働党代表者会で、党最高ポストの第1書記に就任した。4月13日の最高人民会議(国会)で国防委員会第1委員長にも就き、昨年12月に死去した父、金正日総書記からの権力継承手続きを終えた。
新体制発足に合わせた4月の長距離弾道ミサイル発射に失敗。29歳の正恩氏の指導力不足が指摘されたが、12月にはミサイル発射「成功」で技術力向上を誇示し、威信回復を印象付けた。李雪主夫人を同伴して遊園地を視察するなど、新時代の指導者として開放的な面も見せる。ただ、北朝鮮の経済力向上は進まず、党中心の路線への軍の反発がくすぶっているともいわれている。
写真は、平壌の万寿台議事堂で、最高人民会議に臨む金第1書記=4月13日、朝鮮中央通信提供 【AFP=時事】
6位・シリア内戦激化、山本美香さん殺害
シリアでアサド政権打倒を目指す反体制派の武装闘争が活発化し、内戦に発展した。政権側の弾圧にもかかわらず、反体制派は勢力圏を拡大。首都ダマスカスを含む全土で攻防が続き、反体制側の情報によると、死者は11月下旬時点で4万人を超えた。北部アレッポでは8月20日、現地情勢を取材中の日本人ジャーナリスト、山本美香さんが銃撃に遭い、命を落とす事件も起きた。
多数派のイスラム教スンニ派を中心とする反体制派と、アサド大統領の出身母体の少数派アラウィ派が争う構図で、流血の衝突は長期化。政権退陣を求める欧米諸国と、介入に慎重な立場のロシア、中国の対立から、国際社会も有効な手だてを打ち出せない状況だ。
写真は、通夜会場の祭壇に飾られた山本さんの遺影=27日午後、山梨県都留市 【時事通信社】
7位・ミャンマー民主化進展、米大統領も訪問
ミャンマーで、軍政終結を受けた民主化が進展しつつある。4月1日の国会・地方議会の補欠選挙で、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チー氏率いる最大野党・国民民主連盟(NLD)が勝利を収め、同氏自身も下院議員に当選した。テイン・セイン大統領はメディアに対する検閲を廃止し、政治犯の釈放も本格化させた。
民主化に応じて、欧州連合(EU)は4月に対ミャンマー制裁の1年間停止を決定。米国も制裁緩和に動き、オバマ大統領が11月19日、現職米大統領として初めてミャンマーを訪問した。今後、経済成長が期待できるミャンマーに対し、欧米や日本は徐々に投資を拡大させている。
写真は、ミャンマーの民主化運動指導者スー・チー氏(左)と会談し、キスするオバマ米大統領=11月19日、ヤンゴン【AFP=時事】
8位・韓国大統領に朴槿恵氏
12月19日の韓国大統領選で、保守系与党セヌリ党の朴槿恵氏(60)が女性として初の当選を果たした。朴氏は朴正熙元大統領の長女で、親子2代の大統領も初めて。大企業重視で格差を拡大させたと批判されている現職の李明博大統領と距離を置き、「経済民主化」を掲げている。保守色を薄めた公約で、野党候補との接戦を制した。
来年2月発足の新政権の外交課題は李大統領の竹島上陸で悪化した日本との関係改善。朴氏は現実的な対応を目指すとみられるが、韓国世論は竹島、慰安婦問題では強硬姿勢一色であり、難しい局面も予想される。一方、北朝鮮は朴氏を非難し続けており、李政権で停滞した南北対話の展望も不透明だ。
写真は、韓国大統領選に勝利し、ソウル市内にあるセヌリ党の党本部で支持者に手を振る朴氏【EPA=時事】
9位・イスラム勢力台頭、エジプト大統領にモルシ氏
民主化運動「アラブの春」で独裁政権が次々に倒れたアラブ諸国で、シャリア(イスラム法)による国家統治を志向するイスラム勢力が台頭している。地域大国エジプトでは、かつて過激派と見なされ、長年弾圧されたムスリム同胞団が議会最大勢力となった。同胞団出身で自由公正党を率いるモハメド・モルシ氏が6月16、17両日の大統領選決選投票で当選、同30日に軍出身者以外で初の大統領に就任した。
イスラム勢力は、エジプトと同様に独裁政権が倒れたチュニジアやリビアでも存在感を拡大。これに対し、民主化運動を主導したリベラル派や世俗主義者は、国家のイスラム傾斜に危機感を募らせ、各国で対立が深まっている。
写真は、大統領に当選後、カイロ中心部のタハリール広場で演説するモルシ氏=6月29日 【AFP=時事】
10位・中国など新興国の景気減速
2008年のリーマン・ショック以来、世界経済のけん引役となっていた新興国で、成長率の低下が目立った。中国では、国内総生産(GDP)伸び率が7~9月期には前年比7.4%と、7四半期連続で低下し、通年の成長率は13年ぶりに8%を割り込んだ。債務危機の欧州向け輸出が減少したほか、日中関係の悪化も響きそうだ。
頭文字を取って「BRICS」と呼ばれるインド、ブラジルなどでは、減速は一段と鮮明だ。両国は10年にはそれぞれ、10.1%、7.5%の成長率を達成したが、国際通貨基金(IMF)予測では12年には4.9%、1.5%に落ち込むとみられている。
写真は、メキシコのロスカボスで一堂に会したブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国(BRICS)首脳=6月18日 【AFP=時事】
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