図解
※記事などの内容は2010年12月掲載時のものです
◇国内10大ニュース
1位・尖閣沖で中国漁船衝突。映像がネット流出
沖縄・尖閣諸島沖の日本領海で9月7日、中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突。石垣海上保安部は中国人船長を公務執行妨害容疑で逮捕した。これを受け、中国政府は日中間の閣僚級以上の往来を停止。軍事施設保護法違反の疑いで大手ゼネコン「フジタ」社員4人が中国当局に拘束され、レアアース(希土類)の通関手続きが滞った。那覇地検は同25日に船長を処分保留で釈放、「今後の日中関係を考慮」も理由に挙げた。11月4日、インターネットの動画サイトに石垣海保撮影の漁船衝突の映像が流出。同10日に神戸海上保安部の海上保安官が流出させたと告白し、警視庁と東京地検が国家公務員法違反容疑で捜査。
写真は、沖縄・尖閣諸島沖で海上保安庁巡視船に中国漁船が衝突する状況を記録した映像=国会に提出された動画より【時事通信社】
2位・大阪地検で証拠改ざん。検事、元特捜部長ら逮捕
最高検は9月21日、障害者割引郵便制度の悪用に絡む偽証明書発行事件で、押収した証拠品のフロッピーディスクの文書データを改ざんしたとして、証拠隠滅容疑で事件の主任だった大阪地検特捜部の前田恒彦検事を逮捕。前田検事はデータを検察側の構図と矛盾しない内容に書き換えた。その後、前田検事の上司だった大坪弘道元特捜部長と佐賀元明元特捜部副部長が、2月にデータの改ざんを把握した際、検事正らに「故意ではなく、問題ない」などと虚偽報告していたことが判明。10月1日、前田検事が作成した経過報告書を過失を強調する内容に書き直させ、改ざんを隠したとして、犯人隠避容疑で2人を逮捕した。
写真は、大阪地検特捜部による証拠改ざん事件で、逮捕された前田恒彦元検事=9月10日、大阪市北区の大阪地裁【時事通信社】
3位・鳩山退陣、菅内閣が発足。参院選で民主大敗
鳩山由紀夫首相は6月2日、米軍普天間飛行場移設問題での迷走や「政治とカネ」の問題を受けて退陣を表明。同4日の民主党両院議員総会で菅直人氏が代表に選出され、国会で第94代、61人目の首相に指名された。同8日に菅内閣発足。小沢一郎元代表と距離を置く議員を重用した「脱小沢」路線で支持率は一時回復するも、7月の参院選では首相の消費増税発言などが響き、民主党は改選54議席を下回る44議席と大敗。与党は非改選を含めても過半数を割り、衆参で多数派が異なる「ねじれ国会」に。首相は9月の代表選で小沢氏を破り内閣を改造したが、尖閣沖事件での不手際などで支持率は急落。政権運営は厳しさを増した。
写真は、初閣議を終え、記念撮影する菅直人首相(前列中央)ら=6月8日、東京・首相官邸【時事通信社】
4位・小惑星探査機「はやぶさ」が7年ぶり帰還
小惑星探査機「はやぶさ」が6月13日、7年におよぶ宇宙の旅を終えて帰還した。地球と火星の間にある小惑星「イトカワ」の微粒子の回収に成功、世界初の快挙を達成した。数々のトラブルを奇跡的に乗り越え、最後は大気圏に突入して燃え尽きた姿は感動を呼び、宇宙への大きな関心を集めた。はやぶさ本体から分離された耐熱カプセルはオーストラリア南部の砂漠に落下。宇宙航空研究開発機構が回収し、内部からイトカワの微粒子1500個が見つかった。小惑星の岩石は太陽系が誕生した46億年前からほとんど変化しておらず、地球の起源を解明する手掛かりになると期待されている。
写真は、探査機「はやぶさ」と小惑星イトカワの想像図=宇宙航空研究開発機構(JAXA)・池下章裕氏提供 【時事通信社】
5位・野球賭博で大関琴光喜ら解雇、力士多数が謹慎休場
力士、親方らが野球賭博をしていたことが発覚し、相撲界が大揺れとなった。大関琴光喜が野球賭博の常連客になっていると伝えた週刊誌報道を受け、日本相撲協会は実態調査を実施。琴光喜を含む力士ら約30人が野球賭博への関与を申告した。名古屋場所を控えた7月4日の臨時理事会で、特に悪質と判断した琴光喜と大嶽親方を解雇する処分を決定。豊ノ島、雅山らを謹慎休場させて場所開催に踏み切った。しかし、NHKが生中継を取りやめたほか、天皇賜杯授与を自粛するなど異例ずくめの本場所に。その後、武蔵川理事長に代わって就任した放駒理事長は「暴力団等排除宣言」で信頼回復と再発防止を誓った。
写真は、記者会見で頭を下げる力士、親方ら=7月4日、名古屋市内のホテル【時事通信社】
6位・円高で6年半ぶり市場介入。ゼロ金利復活
政府・日銀は9月15日、1ドル=82円台に突入した15年ぶりの急激な円高を受け、約6年半ぶりとなる円売り・ドル買いの市場介入に踏み切った。総額2.1兆円余りと1日の介入額では過去最大規模だったが、米国経済の減速懸念を背景に円相場はその後も一時80円近辺まで上昇し、1995年4月に付けた戦後最高値(79円75銭)に迫った。輸出企業の業績など円高による景気への影響を懸念する日銀は10月5日、事実上のゼロ金利政策の復活を含む包括的な金融緩和策を決定。国債に加え、不動産投資信託(Jリート)など幅広くリスク資産を買い取る基金も創設し、デフレ克服への取り組みを強化した。
写真は、1ドル=80円台を示す電光ボード=10月14日、東京・銀座【時事通信社】
7位・記録的な猛暑、熱中症による死者多数
日本列島は梅雨明け以降、広い範囲で猛暑に襲われた。7月22日に岐阜県多治見市で最高気温となる39.4度を観測し、8月の平均気温はほぼ全国で戦後最高を記録。6~8月の平均気温も平年より1.64度高く、統計を始めた1898年以降で最高。熱中症により高齢者ら多数が死亡した。総務省消防庁によると、7~9月の3カ月間に熱中症のために救急車で病院に運ばれた人は5万3843人と前年の4.2倍。気象庁の異常気象分析検討会は「30年に1回の異常気象」と指摘。北半球中緯度の気温がエルニーニョ現象に続くラニーニャ現象で上昇したところに、勢力の強い太平洋高気圧の影響を受けたのが主因と発表した。
写真は、厳しい暑さが続き、かげろうが立つ道路=8月18日、名古屋市東区 【時事通信社】
8位・宮崎県で口蹄疫、牛豚29万頭を処分
宮崎県で家畜伝染病の口蹄(こうてい)疫が国内で10年ぶりに発生、猛威を振るった。4月20日に感染牛が初めて確認され、ウイルスを大量に排出する豚にも感染、県東部の川南町を中心に急拡大した。国は家畜への初のワクチン接種でウイルスを抑制、ブランド牛の種牛を含む牛豚約29万頭が殺処分された。東国原英夫知事は非常事態を宣言。イベントの自粛や立ち入り制限は大分など隣県にも広がり、宮崎の子牛をブランド牛に育てている全国の畜産農家にも影響が出た。宮崎県が口蹄疫の終息宣言を出したのは、発生から約4カ月後の8月27日。政府は10月、日本の「清浄国」復帰を国際機関に申請した。
写真は、口蹄疫が発生した農場の消毒を行う県の作業員ら=5月15日、宮崎・川南町[宮崎県提供]【時事通信社】
9位・日本航空が経営破綻、改革・再生へ
日本航空が1月19日、会社更生法の適用を東京地裁に申請、経営破綻した。負債額は約2兆3000億円と事業会社では過去最大。京セラ創業者の稲盛和夫氏を会長に迎え、政府が出資する企業再生支援機構の下で再建を目指している。事業規模を3分の2に圧縮するとし、内外45路線からの撤退やグループで約1万6000人の人員削減など抜本改革に着手。パイロットや客室乗務員の退職数は目標に届かず、最大200人を整理解雇する。更生計画は債権放棄に応じた銀行団などの合意を得て11月末に確定。支援機構は公的資金3500億円を出資した。11年3月末に更生手続きを終結し、12年中の再上場を目指す。
写真は、会社更生法適用申請後の記者会見で、頭を下げて退席する日本航空の西松遥前社長(中央)=1月19日、東京・千代田区【時事通信社】
10位・普天間、「辺野古」で日米合意。社民は連立離脱
民主、社民、国民新3党連立の鳩山内閣は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を同県名護市辺野古に移設するとした自民党政権時代の計画の見直しを検討。野党時代に「最低でも県外へ」と表明した鳩山由紀夫首相は、鹿児島県徳之島などへの移設を模索。しかし、米国は辺野古移設を譲らず、首相は「県外」断念に追い込まれ、日米両政府は5月28日に辺野古移設を明記した共同声明を発表した。県外・国外移設を訴えた社民党党首の福島瑞穂消費者担当相が閣議で署名を拒否したため首相は福島氏を罷免し、社民党は連立を離脱。地元は頭越しの日米合意に反発。11月に再選された仲井真弘多知事は県外移設を求めている。
写真は、仲井真弘多沖縄県知事(手前右)と会談し、米軍普天間飛行場の同県名護市辺野古への移設方針を伝える鳩山由紀夫首相(左)=5月23日、沖縄県庁【時事通信社】
◇海外10大ニュース
1位・北朝鮮が韓国・延坪島砲撃、4人死亡
北朝鮮が11月23日、韓国西方の黄海にある延坪島に80発の砲弾を撃ち込み、民間人2人を含む4人が死亡、民家なども多数被害を受けた。北朝鮮は、韓国側が定める海上軍事境界線を認めておらず、自らの領海内で韓国側が射撃訓練を行って挑発したのに対して反撃したと主張した。韓国領土に対する攻撃は朝鮮戦争以来初めて。世論が激しく憤る中で、韓国は新たな挑発には徹底して反撃すると強調。米国と黄海で合同軍事演習を実施し、朝鮮半島情勢は極度に緊迫化した。冷静な対応を求める中国は6カ国協議首席代表会合の開催を提案したが、日米韓は開催に否定的な見解を表明した。
写真は、北朝鮮の砲撃を受け、煙を上げる韓国西方沖の延坪島=11月23日 【AFP=時事】
2位・チリ鉱山、作業員33人奇跡の生還
南米チリ北部コピアポ近郊のサンホセ鉱山で8月5日に大規模な落盤が発生、作業員33人が地下約700メートルに閉じ込められた。半ば絶望視される中で同22日、捜索用の小さな穴が地下へ到達し、17日ぶりに全員生存が確認された。10月になって直径70センチの穴が地下まで貫通。同13日に特殊カプセル「フェニックス(不死鳥)」を使って1人ずつ地上に引き上げ、33人は事故発生から69日ぶりに奇跡的な生還を果たした。ほぼ全員に健康上の大きな問題はなかった。救出作業にはピニェラ大統領が立ち会い、テレビやネットで全世界に中継。前例のない救出ドラマは熱い注目を集めた。
写真は、チリ北部サンホセ鉱山で、69日ぶりに地中から救出され、生還を果たした作業員=10月13日【AFP=時事】
3位・米中間選挙でオバマ民主党大敗
オバマ米政権の任期前半の評価が問われた中間選挙が11月2日に実施され、与党・民主党は、下院で共和党に60議席以上の躍進を許す歴史的大敗を喫した。上院では過半数を死守したが、与野党伯仲の状況となった。米議会に上下両院の「ねじれ」が生じるのは5回目で、2001年以来。選挙戦の最大の争点は、大統領の雇用・経済対策。失業率が10%近くに高止まりする中、「変革」を掲げたオバマ大統領への失望感が拡大した。大統領は議会での優位を失ったことで、共和党の意向にも配慮した政権運営を強いられる。12年の次期大統領選に向け、厳しい再選戦略を余儀なくされることになった。
写真は、ホワイトハウスの記者会見で中間選挙大敗の責任を認めるオバマ米大統領=11月3日、米国・ワシントン【EPA=時事】
4位・北朝鮮の金正恩氏、後継者デビュー
北朝鮮で9月28日、労働党代表者会と党中央委員会総会が開かれ、金正日総書記の三男、正恩氏が党中央軍事委員会副委員長に選出された。正式に党幹部に起用されたことで、総書記の後継者となることが事実上確定。精力的な公開活動も開始し、北朝鮮は故金日成主席、金総書記を継ぐ、社会主義国としては異例の3代世襲へ踏み出した。党幹部人事ではこのほか、金総書記の妹、金慶喜氏が党首脳部の政治局員に、同氏の夫、張成沢氏が軍事委委員などに昇格。この2人が20代後半と若い正恩氏の後見人役を務めるとみられる。ただ北朝鮮を取り巻く情勢は厳しく、権力継承までには困難も予想される。
写真は、北朝鮮の金正日総書記(右)と後継者に確定した三男正恩氏(左)。中央は訪朝した中国の郭伯雄中央軍事委員会副主席=10月25日【朝鮮通信=時事】
5位・欧州債務危機が拡大、ユーロに懸念
欧州16カ国で構成されるユーロ圏では、財政赤字急拡大に見舞われたギリシャが5月、アイルランドも11月に欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)などの緊急融資を仰いだ。その後も信用不安は払拭(ふっしょく)されず、ポルトガルなど南欧諸国への波及が懸念されている。金融危機をきっかけに財政が悪化した一部ユーロ圏諸国では、国債利回りが急上昇。中でも、財政赤字統計の大幅修正を繰り返したギリシャと、銀行危機に陥ったアイルランドが市場の信頼を失い、支援要請に追い込まれた。危機への対応をめぐり各国の足並みの乱れも明らかになり、欧州単一通貨ユーロは円や米ドルなど主要通貨に対して急落した。
写真は、アテネ中心部のギリシャ議会前に、デモ参加のため集結した公務員ら=4月22日【AFP=時事】
6位・中国GDP、四半期ベースで世界2位
日本の内閣府が発表した2010年4~6月期の名目GDP(国内総生産)改定値は、ドル換算で1兆2948億ドルとなり、中国の1兆3369億ドルを下回った。7~9月期も日中逆転が続き、中国が米国に次ぐ世界第2位の経済大国となったことが四半期統計で確認された。通年でも日中が入れ替わる可能性がある。1970年代末に始まった改革開放政策の下で高度経済成長を続け、新車販売台数は09年に米国を抜いて世界一に。経済発展に伴って国際社会での影響力は急速に増し、米中2大国時代の到来とも言われるようになった。その一方、所得格差拡大や環境汚染などのひずみも指摘されている。
写真は、経済成長の象徴、上海万博の中国館前で敬礼する兵士=9月30日【AFP=時事】
7位・ハイチで大地震、25万人死亡
西半球の最貧国であるカリブ海のハイチで1月12日午後4時53分、マグニチュード(M)7.0の強い直下型地震が発生。推定25万人が死亡し、20世紀以降最悪の震災となった。震源は首都ポルトープランス近郊。被災者は人口の3分の1に当たる約370万人と見積もられている。今も130万人以上が劣悪な環境下で避難生活を強いられている。10月には追い打ちをかけるようにコレラが大流行し、2000人以上が死亡した。慢性的な政情不安が国土を荒廃させ、被害を大きくした側面もあり、来年1月に選ばれる大統領には、政情安定化とともに早急な社会資本整備が求められる。
写真は、大地震に見舞われたハイチの首都ポルトープランスの様子=1月14日【AFP=時事】
8位・ウィキリークス、米外交公電を大量公開
内部告発サイト「ウィキリークス」は11月28日、米政府の外交公電約25万点の公開を開始した。米当局者と外国首脳・高官との私的会話、各国情勢や重要人物の分析などが次々に暴露され、世界に衝撃を与えた。流出した公電には北朝鮮の体制崩壊時の対応に関する米韓当局の協議など機密事項も多数含まれる。米政府は外交活動に支障を来しかねないとして、法的措置を検討中。ウィキリークスは匿名の情報提供者が流出させた政府機関などの内部文書を公開する民間サイト。創設者で元ハッカーのオーストラリア人ジュリアン・アサンジ氏は12月7日、国際手配中の性犯罪容疑により英国で逮捕された。
写真は、大量の米外交公電を公開した「ウィキリークス」のウェブサイト=7月27日【AFP=時事】
9位・尖閣事件めぐり、中国各地で反日デモ
尖閣諸島沖の漁船衝突事件をめぐり日本の海上保安庁巡視船が中国漁船の航行を妨害したと主張する中国政府は、駐中国日本大使を繰り返し呼び出して抗議するなど激しく反発。閣僚級以上の交流停止など報復措置を取った。9月18日には北京など各地で抗議行動が行われた。漁船船長釈放後の10月4日、温家宝首相がブリュッセルで菅直人首相との非公式会談に応じ、関係改善に踏み出したものの、同16日に成都、西安、鄭州で反日デモが発生。一部が暴徒化して日系店舗などに被害が出た。反日デモはその後も散発的に続き、同月末のハノイでの日中首相会談は非公式「懇談」にとどまった。
写真は、尖閣諸島沖事件をめぐり、中国河南省鄭州市で行われた反日デモ=10月16日【EPA=時事】
10位・ノーベル平和賞に劉暁波氏
ノルウェーのノーベル賞委員会は10月8日、中国の民主活動家、劉暁波氏にノーベル平和賞を授与すると発表した。「中国の基本的人権のため長く非暴力闘争を行ってきた」のが授賞理由。12月10日、オスロで授賞式が行われたが、中国政府が反発を強める中、獄中の劉氏のほか、自宅軟禁状態に置かれた妻の劉霞さんも出席できない異例の展開となった。劉氏は1989年の天安門事件につながる民主化運動で主導的役割を果たした。また、2008年12月には共産党一党独裁を批判した「08憲章」を起草。10年2月に国家政権転覆扇動罪で懲役11年の判決が確定した。
写真は、ノーベル平和賞を受賞した中国の民主活動家、劉暁波氏(左)と妻の劉霞さん=10月22日【AFP=時事】
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