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【図解・社会】東日本大震災9年・被災3県の会場運営の枠組み(2020年3月)

被災3県の会場運営の枠組み

音楽や演芸で「心の復興」を=別れの悲しみ乗り越え―東日本大震災9年

※記事などの内容は2020年3月1日掲載時のものです

 音楽や演芸、スポーツなどのイベントを通じ、東日本大震災で家族や友人を亡くした人たちの「心の復興」を支える活動が、東京都と福島、岩手、宮城の被災3県を結んで続けられている。息の長いチャリティーにするため、経済的な基盤を確保したのが大きな特長だ。主催する一般社団法人チームスマイル(東京)の矢内広代表理事(ぴあ社長)は「被災者が自らの足で立ち上がる力にしてほしい」と話し、イベントが悲しみを乗り越えるきっかけになることを願っている。

 ◇「夢かなえ、あすを生きる希望に」

 チームスマイルは2014年10月、東京・豊洲会場(東京都江東区)を建設。ここで開かれるコンサートや講演会などで得た収益を、福島県いわき市や岩手県釜石市、仙台市に構えた会場の建設費やイベントの運営費に充てている。4会場はいずれも「PIT(ピット)」と名付けられ、被災3会場は地元出身者が運営。理事には作詞家の秋元康さんや小説家の林真理子さんらが就任し、イベントの企画などに関与している。
 今年2月8日、釜石PITで行われた入場無料のイベントには開場前から約700人の観客が列をつくった。狂言師の野村万蔵さんと落語家の古今亭菊之丞さんがそれぞれ演目を披露。会場は笑いの渦に包まれた。
 釜石PITの開業は16年1月。支配人の井筒健太郎さんによると、家族・友人を亡くした悲しみや地域の交流が絶たれた孤独感から、「当初はイベントを心から楽しめない人が数多くいた」という。しかし、イベントを通じ友人や知人と再会を果たしたことなどで、入場者には次第に笑顔が戻った。井筒さんは「子どもたちの夢をかなえられるよう後押しし、大人たちがあすを生きる希望につながる活動を続けたい」と意気込む。
 被災3会場ではこれまで、20回以上のイベントを入場無料で開催。ミュージシャンの布袋寅泰さんやマラソン解説者の高橋尚子さんも出演した。

 ◇飲み物代の1割が運営費に

 豊洲PITで入場者が1杯当たり500円を支払う飲み物代のうち50円は、被災3会場のイベント運営費に回る。これまでに延べ約150万人が購入し、約7500万円が運営費に充てられた。
 観客は葉の形をしたシールを1杯につき1枚受け取って豊洲PITに設置された枯れ木の絵に貼り、「支援の木」を茂らせる。ちょっとした支援も積み重なれば大きな力になることを観客に実感してもらい、東京と被災地の心をつなぐのが狙いだ。会場を訪れた男性会社員(25)は「飲み物を買うだけで支援できるのは気軽で良い」と語った。
 釜石市の野田武則市長は、釜石PITで行われたほぼすべてのイベントに出向き、多くの市民の笑顔に触れた。震災復興のため市が整備する道路などの工事は20年度にも終わる見通しだが、「心の復興に終わりはない」と強調している。
 一方、矢内代表理事は「エンターテインメント(娯楽)は心のよりどころだが、最後は被災者が自分で立ち上がるしかない」と話し、現在の枠組みに数年で区切りを付ける意向を示している。被災3会場のうち2会場はチームスマイルが建物を所有するが、将来的にはそれぞれの地元で受け継ぎ、文化の発信拠点として活用してもらいたい考えだ。 

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