図解
※記事などの内容は2018年3月4日掲載時のものです
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島各県の計42市町村のうち、惨禍を後世に伝える「遺構」が半数超の23市町村に少なくとも41件現存していることが時事通信の調べで分かった。このうち4件は民間が保存を主導している。福島県では調査に着手したばかりの自治体があり、数は増える可能性もある。
昨年12月~今年2月に42市町村に取材し、大津波と原発避難の被害を伝える構造物や自然物の存在を調べた。復興交付金の支給対象となる「震災遺構」に加え、対象外でも積極的に保存している物や「壊す予算がない」といった理由で残っている物も集計。撤去・解体が確定した物と1人で持ち運べる物は除外した。
内訳は岩手が8市町村に16件、宮城は8市町に13件、福島は7市町村に12件。民間の管理も含めて5件が残る岩手県陸前高田市が最も多い。
種別では学校の8件が最多。他に防潮堤の一部、交番、パトカー、庁舎、歩道橋、公営住宅など公共施設が大半だった。ホテル(岩手県宮古市)や駅の一部(宮城県東松島市)といった民間施設を公費で保存するケースもある。
岩手県釜石市は住民の意向を尊重して防災センターを解体後、壁や時計を保管。2019年に完成予定の追悼施設に展示する。同県大槌町は、旅館の上に乗り上げ、後に撤去された観光船の復元を目指しており、資金を募る条例を制定した。
第1原発が立地し、今も大部分の立ち入りが制限されている福島県双葉町は、建物の残存状況や被害程度の調査を昨年11月から始めた。遺構についても議論しているが、まだ深まる以前の段階だ。
同県大熊町は住民が集まっていた施設を3D撮影し、動画を公開したり模型を作ったりする事業を進めている。中間貯蔵施設の建設予定地域は建物が壊され、「ふるさとが消える」(担当者)ためだ。遺構と位置付けていないが、予定地内の熊町小学校を「町民の心のよりどころ」として残すことを決めた。同校は、使い込んだ辞書やランドセルが教室に散乱。避難時の状態がタイムカプセルのように残っている。
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