図解
※記事などの内容は2020年1月2日掲載時のものです
名古屋大の研究チームは、雄の求愛から交尾に至る雌のハエの脳のメカニズムを解明したと発表した。雌は雄の求愛を初めは拒むが、繰り返しアタックされると受け入れる。この行動転換で働く脳の仕組みを特定し、「雄は諦めずに求愛を続けることが必要」と結論付けた。論文は2日付の米科学誌カレント・バイオロジーに掲載された。
名大ニューロサイエンス研究センターの上川内あづさ教授らによると、ショウジョウバエは雄が雌を追い掛けるなどして求愛し、雌はいったん拒否の態度を示す。この際、雌の脳では神経伝達物質ドーパミンの放出が確認されたといい、雄が分泌するフェロモンの影響が考えられるという。
ドーパミンの作用で脳中心部の「楕円(だえん)体」が刺激され、相反する働きをする2種類の神経細胞(ニューロン)が反応。求愛をはねつけようとする「拒否ニューロン」が活性化すると、別の神経伝達物質の作用で「受容ニューロン」が促進され、拒否反応を抑制することが分かった。研究チームは「何度振られても求愛を継続することで受容が拒否を上回り、雌の愛を獲得できる」とした。
ただ、粘り強い求愛が必ず実るわけではない。研究チームの石元広志特任講師は「交尾が成立しないケースもある。雌が自分に合う雄をどう選んでいるか、今後の研究で明らかにしたい」と話す。
昆虫の脳の楕円体は、脊椎動物の脳にある「大脳基底核」と構造や機能が似ており、他の動物の研究にも応用できるという。
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