図解
※記事などの内容は2019年1月2日掲載時のものです
今年の干支(えと)はイノシシ。無病息災の象徴とされる縁起の良い動物だが、近年は田畑を荒らし、時に町中を猛進する「害獣」としての一面が目立つ。国は捕獲数を増やし、野生鳥獣の肉「ジビエ」として活用を促進するなど、対策を強めている。
環境省などによると、2016年度のイノシシの生息数は約89万頭で、25年前の約3倍に増えたと推測される。餌を探しやすい耕作放棄地の増加や、狩りをするハンターの減少などが要因とみられる。害獣としての駆除が増えたことで、17年度の捕獲数は約53万頭に上った。
農林水産省がまとめた17年度のイノシシによる農作物被害は約48億円。全体の3割近くを占め、シカに次ぎ多い。近年は減少傾向だが、担当者は「被害に落胆した農家が廃業するなど、数字以上の実害がある」とみている。
農水省などは23年度までにイノシシを約50万頭に減らす方針で、19年度は約70万頭の捕獲目標を掲げる。「食肉にすれば実入りとなる」として、ジビエとしての流通増も目指し、取り組む地域の拡大や消費者の需要掘り起こしを進める考えだ。
近年は市街地に現れたイノシシが人を傷つける被害もある。環境省は、都道府県が作るイノシシの保護や捕獲の計画にこうした被害を防ぐ内容も盛り込むよう、19年度にガイドラインを改定する方針だ。
捕獲だけでなく、耕作放棄地の管理や柵による田畑の防衛も対策として欠かせない。農研機構西日本農業研究センターの江口祐輔さんは、農業をやめた後に果樹などをそのまま残したり、山を手入れせず放置したりすることは、知らないうちに餌付けしているのと同じことだと指摘。「まずは餌にならないよう管理するのが第一。農地も守った上で、捕獲は最後だ」と強調した。
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