図解
※記事などの内容は2016年9月9日掲載時のものです
探査機「はやぶさ」が実現した小惑星からの試料回収は、宇宙探査の新たな可能性を示した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の後継機「はやぶさ2」を追うように、米航空宇宙局(NASA)は「オシリス・レックス」を開発。2機の探査機は協力関係を築きつつ、生命の起源解明にしのぎを削る。
はやぶさ2は、2014年12月に打ち上げられた。目的地の小惑星「リュウグウ」とオシリス・レックスが向かう「ベンヌ」は、いずれも地球と火星の間の軌道を回っている。有機物や水を多く含んでおり、生命の起源となる物質がどこから来たかを解明する手掛かりになると期待される。
2機の探査機は18年夏に相次いで目的地に到着し、観測や試料採取を試みる。重さ約600キロのはやぶさ2に対し、オシリス・レックスは約2トンと大型で、小惑星の表面に窒素ガスを吹き付け、最大2キロの試料を一気に採取する。
一方、はやぶさ2は場所を変えながら3回の採取を計画。人工クレーターを作り、小惑星内部の物質を採取するなど、回収量は最大数グラムと少なくても、特徴のある試料を集める。前プロジェクトマネジャーの国中均JAXA教授は「はやぶさ2は小さいが、日本の実情に合った探査機をうまく作れた」と話す。
試料が入ったカプセルが地球に帰還するのは、はやぶさ2が20年末、オシリス・レックスは23年9月の予定。JAXAとNASAは試料の一部を交換する協定を結び、研究者を相互に派遣するなど、競争の一方で協力関係も強めている。
日本からオシリス・レックスの研究チームに参加する吉川真JAXA准教授は「いずれも生命の起源物質を解明しようとする野心的なミッション。はやぶさ2の運用も心して行いたい」と話している。
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