図解
※記事などの内容は2019年2月16日掲載時のものです
飲食店でごみ箱に捨てた魚を戻したり、コンビニではおでんを口に入れて出したり-。アルバイト従業員が「不適切動画」を撮影、投稿し、事業者側が解雇、謝罪する事態が続いている。問題の背景には「ネットは公の場所」という認識の欠如や、「仲間に存在を認めてほしい」という心理的欲求があると指摘される。
悪ふざけ動画の投稿は、今年に入り急増したとされる。横浜市内のセブンイレブンでは、男性従業員がおでんの白滝を口に入れて出すなどした。関東地区にある牛丼のすき家では、従業員2人がおたまを股間に当てるなどし、別の従業員が撮影して「くびかくご」との字幕入りでインターネット交流サイト(SNS)に投稿。運営会社によると、3人は反省の言葉を口にしているという。
こうした動画の投稿は2013年にも、ツイッター上で続き社会問題となった。今回は、各社とも、刑事・民事での法的対応を検討するなど厳罰を科す姿勢を示していることが大きな特徴だ。
一連の投稿について、ITジャーナリストの三上洋氏は、インスタグラムの機能「ストーリーズ」が使われているとみられる点に注目。この機能を使うと、動画は24時間で消えるため投稿の心理的ハードルが低い上、閲覧を仲間内に限ることも可能という。
三上氏は「6年前の騒動と構図は同じ。ネットは公の場所で投稿は一生消えないが、SNSを完全に内輪だけのコミュニティーと錯覚、誤解している。仲間受けを狙い、より過激な動画を競う中でエスカレートし、何らかの方法で第三者によって拡散された」とみている。
「人間は自分の行動に対して60秒以内に反応があると快感を感じる。投稿には、自分の存在を認めてほしい承認欲求がある」と話すのは明星大の藤井靖准教授(心理学)。「個人的欲求に加え、悪ふざけの実行者と撮影者という集団の中で行動がさらに過激になる」という。
一連の投稿は業務妨害罪が成立する可能性もある。藤井准教授は「厳罰化方針は歯止めになり得る」とみる一方、「もちろん悪いのは本人だが、経営者側への不満が積もり『バイトテロ』になった可能性もある」と指摘。「これを機に、経営者側も長時間労働の問題など、職場環境が学生らアルバイトに本当に適切か再検討する必要もあるのでは」と話している。
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