図解
※記事などの内容は2015年12月29日掲載時のものです
羽田空港の国際線の発着回数を増やすため、国土交通省は、航空機が東京都心上空を通過して離着陸する飛行ルートの導入を検討している。2020年の東京五輪開催までに現状の年約9万回(1日123便)から年約12.9万回(同176便)に増やし、成田空港よりも都心に近い利点を生かして羽田の国際化を進めたい考えだ。
羽田空港から約4キロ離れた大田区役所で15年12月中旬、新しい飛行ルートに関する国交省の説明会が開かれた。解説パネルの前で職員が住民のそばに立ち、説明を続けていた。
「騒音問題はどう解決するのか」「地価は下がらないか」。新ルート下の同区では80デシベルと地下鉄の車内と同程度の騒音が見込まれる住宅地があり、職員に問いただす住民の姿も見られた。
同区の自営業岡本光主さん(62)は「航空機はこの数十年前で性能が上がり静かになっているが、心配なのは落下物だ」と懸念する。
夏を中心とした南風時の新ルートでは、着陸態勢に入った航空機は、さいたま市上空を高度約900メートルで飛行し、新宿や渋谷など都心部の上空を南下。JR品川駅(港区)付近で高度約450メートルまで降下し、着陸する。新ルートで需要が多い昼間の発着を増やし、年間の増加分約3.9万回を国際線に充てる。
住宅街に囲まれた伊丹空港(大阪府豊中市)や福岡空港(福岡市)では住宅地上空を低高度で飛行するが、羽田では東京湾を活用して都心上空の低高度の飛行を見合わせてきた。
羽田では第4滑走路の供用開始により10年に32年ぶりに国際定期便が復活。14年には国際線発着を約6万回から約9万回に増やし、全体の発着44.7万回のうち国際線が約2割を占める。
しかし、羽田と成田を合わせた国際線旅客数は香港やソウルなどアジアの空港に劣っていることなどから、国交省の担当者は「東京湾上空の航空機の過密状況は限界に近い。国際競争力を維持するためにも新ルートの導入が必要だ」と語る。
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