図解
※記事などの内容は2019年9月26日掲載時のものです
日米首脳間で最終合意した貿易協定は、日本が多くの農産品市場を環太平洋連携協定(TPP)並みに開放する結果となった。牛肉の関税を段階的に9%にまで引き下げるほか、ワインや一部のチーズは撤廃する。一方、日本が「聖域」と位置付けるコメは無関税輸入枠が設定されることなく、無傷で終わった。
米国が引き下げを強く求めていた牛肉の関税は、現在の38.5%から、オーストラリアやカナダなど先行するTPP加盟国に追い付く形で段階的に削減し、2033年度に9%とする。輸入が急増した際に関税を引き上げる緊急輸入制限(セーフガード)の発動基準は20年度24万2000トンとし、18年度の米国からの輸入実績(25万5000トン)より低く抑えた。
TPP加盟国全体の発動基準はTPP交渉離脱前の米国分も含んだ過大な量となっている。このため、加盟国と協議の上、23年度以降は米国の発動基準を廃止し、TPP基準に含めたい考えだ。
豚肉は高価格品で関税を撤廃、低価格品は1キロ当たりの税額を現在の482円から50円まで徐々に引き下げる。
小麦は、日本の商社などが安く仕入れることができる輸入枠を新設。19年度は12万トンとし、24年度には15万トンに増やす。粉チーズとシュレッドチーズの関税は段階的に撤廃。カリフォルニアなどが有力産地のワインの関税もTPPと同様、25年度に撤廃する。
コメは、TPP交渉時に最大7万トンの無税枠設定で合意していたが、今回は見送った。バターや脱脂粉乳も新たな低関税枠を設けないことで決着。TPPで関税撤廃・削減の対象だった木材、水産品の関税は維持が決まった。
これに対し米国は、和食ブームで人気が高まる日本産牛肉の自由化を容認。日本は現在、1キロ当たり4.4セント(約5円)の低関税枠を200トン保有するが、複数国による6万4805トンの枠も使えるようになる。18年実績で400トン超を輸出する日本にとって、輸出拡大に向けた追い風になりそうだ。
日本産のワインや焼酎は、容器規制が緩和される。米国が指定する容量の容器でなければ輸出できなかったが、日本で流通している容器でも可能とする。また、しょうゆやナガイモ、緑茶など日本が売り込みたい品目の関税も撤廃、もしくは削減される見通しとなった。
一方、日本が要求していた自動車・同部品の関税撤廃は先送りとなった。協定付属文書に将来の撤廃に向けてさらに交渉する方針を明記するが、時期は未定。米国が日本車に対して輸入数量規制を導入しないことでは合意した。このほか米国向けでは、産業機械や化学品など輸出量が多い品目を中心に関税を撤廃・削減することが決まった。
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