図解
※記事などの内容は2019年4月10日掲載時のものです
日米両政府は15、16日を軸に米ワシントンで新たな貿易協定交渉の初会合を開く。物品関税の撤廃・削減に加え、サービス分野や為替問題などを交渉範囲に含めるかどうかを協議する。日本は関税分野などに限定したい考えだが、米国はサービスを含む包括的な自由貿易協定(FTA)を目指しており、折衝は冒頭から難航しそうだ。
初会合には茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が出席し、今月下旬にも開かれる日米首脳会談に内容を報告する見通し。日米が今後、関税や非関税障壁の撤廃を協定に盛り込むことになれば、国際ルール上は史上初の日米間のFTAが誕生することになる。
日本は交渉について、物品貿易協定(TAG)と自称し、関税分野や通関手続きに交渉範囲を狭めたい意向。だが、USTRは交渉目的として「自動車の非関税障壁への対応」「デジタル貿易」「為替」など22項目を列挙し、関税にとどまらない自由化に意欲を示している。
昨年末以降、環太平洋連携協定(TPP)や日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が相次ぎ発効し、米農産品の対日輸出環境は悪化。農業団体の不満を背景に、パーデュー米農務長官は「TPPと同水準かそれ以上」の市場開放を訴えている。
トランプ米政権は、日本製自動車の対米輸出の数量制限を検討しているほか、通貨安誘導を封じ込める為替条項の導入も求める可能性がある。日本は数量制限について「管理貿易につながりかねない措置には反対だ」(茂木氏)とけん制。為替条項も協定本文での扱いを回避する道を探る。
ただ、「来年秋の大統領選再選が最重要課題」(日本の通商担当者)とされるトランプ大統領にとって今回の対日交渉は、「鉄鋼、自動車、豚肉業界の支持を得るためのツールになる」(元米政府高官)とみられ、米国が強硬な要求を突き付ける公算は大きい。
米中間の貿易協議や米国内の政治情勢が影響する可能性もあり、茂木氏は「TPPなどと比べても大きな政治判断で進めていく要素が強くなる」と身構えている。
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