図解
※記事などの内容は2019年1月31日掲載時のものです
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が2月1日に発効し、世界貿易の約4割を占める巨大な自由貿易圏が誕生する。相互に貿易品目の9割超の関税を撤廃し、通関手続きなどを簡素化。知的財産権の保護を厳格化する共通ルールなども導入される。小売業界では早くも関税削減による仕入れコストの減少を見込み、欧州産ワインの値下げを始めており、消費者が価格低下の恩恵を感じる機会も増えそうだ。
欧州産ワインの関税は発効と同時に撤廃される。小売り各社はフランス産やイタリア産などの値下げを相次ぎ実施。サントリーワインインターナショナルの担当者は「ワイン市場が盛り上がり、興味を持つ人が増えるのでは」と期待する。国産ワイン業界も欧州に輸出しやすくなるが、「生産量が少なく、すぐに輸出を増やすのは難しい」(メルシャン)ため、まずは国内消費者への一層の浸透を図った上、輸出体制を整える構えだ。
欧州産の豚肉やパスタ、チョコレート菓子なども関税が削減される。モッツァレラなど人気があるチーズには低関税輸入枠が設定され、これらの欧州産品は国内でも手に入りやすくなりそうだ。一方、政府は国内農家が激しい競争にさらされるとし、経営支援策を講じていく方針だ。
自動車関連産業は、対欧輸出の拡大が期待されている。EUは、日本製乗用車に課してきた10%の関税を発効8年目に撤廃する。工業製品に加え、牛肉や日本酒、緑茶なども発効後すぐに関税がゼロになり、経済産業省幹部は「中小、中堅事業者にチャンスとなる」と見ている。
ルール分野では、地域特産品の名称やブランドを守る地理的表示(GI)保護制度が相互に適用される。日本の「神戸ビーフ」やフランスの「カマンベール・ド・ノルマンディ」などは、日欧双方で模倣品を排除する仕組みが強化される。
日本酒大手、日本盛(兵庫県西宮市)は昨年、地元の灘酒生産地を示すGIの「灘五郷」を取得。2月から海外向けの大吟醸「風雅」に灘五郷マークを付け、EUでの販売拡充を目指すという。同社担当者は「欧州で日本酒が一層身近な存在になってほしい」と話す。「神戸ビーフ」ブランドを管理する「神戸肉流通推進協議会」も、ブランドの価値が守られることで「輸出増を期待できる」と協定発効を歓迎している。
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