図解
※記事などの内容は2018年10月26日掲載時のものです
中国が東京電力福島第1原発事故以来続けている福島など10都県の食品・農林水産物の輸入停止措置が、解除に向けて動きだす可能性が出てきた。26日の李克強首相と安倍晋三首相による日中首脳会談で、中国側が科学的評価に基づいて規制緩和を積極的に検討すると表明したためだ。一方で、会談で緩和が実現するのではとの期待が高まっていただけに、関係者の間には失望もある。
緩和検討は李首相が安倍首相に伝えた。安倍首相は会談後の記者会見で「歓迎する。中国の皆さんに日本が誇るおいしい農産物を堪能してもらいたい」と述べた。
中国は現在、放射性物質の影響を懸念し、福島、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、新潟、長野の10都県からの輸入を全面的に停止。それ以外の地域でも、中国へ出荷するには放射性物質の検査証明書などの添付が必要な場合がある。
日本は原発事故後、国産品の安全性を示す科学的なデータを提供するなど規制緩和を訴えてきたが、協議は停滞。沖縄県・尖閣諸島問題で日中関係が冷え込んだことが影響したとされる。しかし最近の関係改善に伴い、今年5月の李首相訪日時に緩和に向けた日中合同の専門家チームの設置が決定。今夏以降は「閣僚経験者が訪中し、踏み込んだ協議を続けてきた」(政府関係者)という。
李首相の発言を前向きに受け止める評価がある一方で、協議に携わった関係者は「(緩和検討だけでは)前進とは言い難い」と冷めた見方をしている。政府は引き続き禁輸緩和を強く働き掛け、来年にも見込まれる習近平国家主席の訪日までの緩和実現を目指す。
2017年の食品・農林水産物の輸出額は計8071億円。うち、中国向けは1007億円で、香港、米国に続き、3番目の規模。7年以上続く禁輸が解除され、コメなどの輸出が再開されれば、日本が掲げる食品輸出1兆円の目標達成へ強力な後押しになる。
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