図解
※記事などの内容は2018年10月6日掲載時のものです
日本政府は9月下旬の日米首脳会談後、2国間の関税撤廃・削減を目指す「物品貿易協定」(TAG)交渉を開始すると発表した。国内での自由貿易協定(FTA)への懸念を背景に、安倍晋三首相は「(TAGは)包括的なFTA交渉ではない」と強調。これに対し、トランプ米政権は実質的なFTA交渉を始める構えだ。年明け以降の交渉では米国が自動車の対米輸出数量規制など管理貿易措置を持ち出す可能性がある。日本は認識のずれを抱えながら厳しい折衝を迫られそうだ。
政府は首脳会談後の共同声明(日本語版)で「日米物品貿易協定(TAG)」とともに「他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るもの」も交渉を始めると表明。TAGを「Trade Agreement on Goods」の略称だと説明した。
しかし、米ホワイトハウスが発表した共同声明(英語版)に「TAG」の文字はない。物品を指す「goods」は頭文字が大文字ではなく、小文字で表記。日米は「物品および、サービスを含む他の重要な分野(早期に結果を得られるもの)」について「Trade Agreement(貿易協定)」交渉に入ると記された。
世界貿易機関(WTO)協定上、特定国に対して関税を引き下げるには、環太平洋連携協定(TPP)のようなFTAの締結が一般的には必要とされる。日米は物品と一部サービス分野の後に、投資分野などを交渉することに合意しており、元米政府高官は「FTA交渉が始まる」とみる。実際、ペンス副大統領はワシントンで4日、「日本と2国間の歴史的な自由貿易交渉(Free Trade Deal)を始める」と演説し、FTAを視野に包括的な自由化を迫る構えを見せた。
一方、日本政府は「日米2国間で関税交渉した後は、投資・サービスなどでは多国間の枠組みに米国を引き込む」(幹部)と語り、TAGは日米FTAに至らないと主張する。
なぜ、安倍政権はFTAという言葉を避けるのか。自民党の支持基盤である農畜産業界はFTAによる関税撤廃に懸念を強めており、安倍首相はトランプ政権との貿易協議について一貫して「日米FTA交渉の予備協議ではない」と主張してきた。
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