図解
※記事などの内容は2018年9月27日掲載時のものです
日米両政府は、農産品の関税引き下げなどを含む新たな2国間協議に入ることで合意した。農業団体は、牛肉やコメで高い競争力を持つ米国からの市場開放圧力が強まることを警戒。一方、米側の追加関税措置による負担を当面回避できる見通しとなった自動車業界は胸をなで下ろしている。
政府はこれまで、米国との貿易協議(FFR)に関し、「環太平洋連携協定(TPP)の合意水準を上回る譲歩はしない」(農林水産省幹部)と繰り返し説明。米国のTPP復帰を促す場として農業団体に理解を求めてきた。
しかし、農産品の関税引き下げを前提にした新たな2国間協議にかじを切ったことで、農協グループ幹部は「TPPの合意水準がスタートラインになるのでは」と不安を募らせている。
牛肉関税の場合、米国産は38.5%だが、TPP加盟国は最終的に9%まで低下。米国が新協議でTPP以上の関税引き下げを要求する可能性があり、押し切られれば、TPPでも同様の対応を求められかねない。全国農業協同組合中央会(JA全中)の中家徹会長は27日、「現場の不安を助長しないよう、交渉過程を可能な限り透明化してほしい」とするコメントを発表した。
一方、日本自動車工業会の豊田章男会長は「(日米の)協議中は追加関税が発動されないことを歓迎する」との談話を発表。トランプ政権は輸入車に最大25%の関税を検討し、発動すれば経営への影響は避けられなかった。経済同友会の小林喜光代表幹事も「当面の摩擦を回避する建設的な結果だ」と評価した。
ただ、対日貿易赤字の大幅削減は容易でなく、今後の交渉次第では、追加関税の議論が再燃する恐れもある。自動車業界は「この問題が終わったわけではない」(大手メーカー関係者)と警戒を解いていない。
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