図解
※記事などの内容は2018年8月6日掲載時のものです
日米両政府は9日、新たな貿易協議(FFR)の初会合をワシントンで開く。トランプ米政権は日本に対し、2国間の自由貿易協定(FTA)の締結交渉を正式に求めてくる可能性がある。
-2国間FTAとは。
相手国と個別に協議する貿易協定で、工業品や農産物の関税の相互撤廃などで経済活動を促進するのが目的だ。日米間で結んだことはない。
-米国はなぜ2国間で交渉したいの。
要求を直接ぶつけ合うため、大国が優位になりやすいからだ。トランプ大統領が離脱を表明した環太平洋連携協定(TPP)のような多国間交渉は、米国でも少数派の立場になると妥協を迫られた。トランプ氏は「多国間交渉は複雑で時間がかかる」と批判している。
-日本の対応は。
米国にTPPへの復帰を促す考えだ。米国とFTA交渉を始めれば守勢に立たされ、TPPの合意水準を超える市場開放を求められると警戒する。日本はTPPへの参加を決めた際も、国内の農家や産業に及ぼす影響を比較考慮して「日米FTAよりまし」という算段があった。政府は「国益に反する合意はしない」(安倍晋三首相)と繰り返しており、対米FTAを受け入れると、これまでの国民への説明との整合性が問われる。
-米国の関心は。
日本の農産品市場の開放に期待を寄せる。来年前半にも米国抜きのTPP新協定と、日本と欧州連合(EU)の間の経済連携協定(EPA)が発効すると、牛・豚肉、小麦、ワイン、一部乳製品の対日輸出で不利になると分析している。米国にはTPP参加国との2国間FTAを通じて切り崩しを図る狙いもあり、日本が対米FTAに傾けば、米国のTPP復帰は遠のく。
-日米FTAの可能性は。
日本政府内には、米政権が検討する輸入自動車・同部品への追加関税を免除する条件としてFTA交渉入りを強いられるのが「最悪のシナリオ」(経済官庁幹部)との見方もある。ただ、トランプ氏は現在、今秋の中間選挙を前に有権者の支持獲得につながる即効性のある外交成果を一層重視している。交渉から発効まで数年単位の時間を要するFTAに固執するかは不透明だ。(ワシントン時事)
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