図解
※記事などの内容は2018年7月17日掲載時のものです
日本と欧州連合(EU)は17日、昨年合意した経済連携協定(EPA)に署名する。2019年前半にも発効し、人口約6億人、世界の国内総生産(GDP)の3割を占める広域経済圏が実現する。関税引き下げと貿易・投資ルールで高水準の内容を盛り込んで自由貿易を推進し、「貿易戦争」をも辞さないトランプ米政権の保護主義に対抗する。
日欧は、双方の貿易品目の9割超で関税を撤廃する。消費者にとってはチーズやワイン、パスタなどが安くなる恩恵もありそうだ。特許など知的財産の保護をはじめとするルールも整備した。外務省幹部は「日本企業がEU域内で事業を展開しやすくなり、輸出拡大が見込める」と期待する。
13年春に始まった交渉が17年に一気に妥結した背景には、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱など自国第一主義を掲げるトランプ大統領の誕生があった。溝が深かった「投資保護」と「紛争解決」の2分野を交渉から切り離し、保護主義拡大を防ぐために協定締結を優先した。
日本政府は米離脱後の新協定「TPP11」をまとめ、国会承認も済ませた。日欧EPAとともに早期に発効させ、中国やインドを含む16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉の年内妥結も目指す。多国間協定のメリットを示し、米国に再考を促すのが狙いだ。
ただ思惑通りに行くかどうかは予断を許さない。米国は日本の最重要輸出品目の一つである自動車の輸入制限をちらつかせている。今月下旬にも開く日米新貿易協議(FFR)では「自動車や農業分野で厳しい要求を突き付けてくる」(政府関係者)可能性が高い。一方のEUも、米国との貿易戦争に加え、19年3月を期限とする英国のEU離脱問題など、波乱要因を抱えている。
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