図解
※記事などの内容は2018年6月6日掲載時のものです
カナダのシャルルボワで8日開幕する先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)では、米国が欧州連合(EU)やカナダなどに適用を拡大した鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置が、経済分野の議論の波乱要因になりそうだ。北朝鮮問題などでトランプ米大統領と連携してきた安倍晋三首相は、米国と欧州などの対立激化によるG7の分断回避に向け、難しい立ち回りを迫られる。
米国は3月下旬、中国や日本などの鉄鋼・アルミ製品に高率の上乗せ関税を課す輸入制限措置を発動。今月初めには、EUとカナダ、メキシコも輸入制限の対象に加えた。
これに強く反発したEUやカナダなどは、米国産の工業製品や農産物に追加関税を課す対抗措置を表明。一方、トランプ大統領は鉄鋼・アルミに加え、日本の主力産業である自動車や自動車部品でも輸入制限発動の検討に入った。
先に開かれたG7財務相会議では、こうした米国の保護主義的な通商政策に各国から強い批判や不満が噴出。自由貿易推進による世界経済の拡大を目指してきたG7の結束は、「米国第一」主義を曲げずに孤立感を深めるトランプ政権の対応で大きく揺らいでいる。
日本は、G7の足並みが乱れれば、世界で影響力を強める中国の不公正な貿易慣行に対しても「断固とした対応を取ることが難しくなる」(経済産業省幹部)と懸念。このため米国との対立を避けながら、多国間の貿易枠組みである環太平洋連携協定(TPP)への復帰をトランプ政権に働き掛けるという基本スタンスを崩していない。
日本は今夏にも米国との新たな貿易協議を始める予定。2国間の協議に向けて米側を刺激しないためにも、EUのような輸入制限への対抗措置はすぐには取らない方針だ。G7サミットでは、安倍首相が、トランプ大統領と米への対決姿勢を強める議長国カナダやEU各国の首脳との間を取り持ち、双方の妥協点を探れるかが注目される。
新着
会員限定