図解
※記事などの内容は2017年11月24日掲載時のものです
政府は24日、新しい環太平洋連携協定(TPP)や日本・欧州連合(EU)経済連携協定(EPA)の合意を受け、国内の農林水産業や中小企業向けの追加支援策を決めた。必要な施策は発効を待たずに実施する方針だが、いずれの協定も積み残した難題を抱えている。TPP11カ国の思惑にはずれもあり、日本政府が目指す2019年の発効に向けて波乱含みの情勢だ。
離脱した米国を除くTPP参加11カ国は9日、新協定で閣僚合意に達した。チリなどは年明けの署名を望むが、足並みがそろうかは見通せない。発効には過半数の6カ国の国内手続き完了が必要で、一時は合意を覆す構えを見せたカナダの動向が焦点となる。米国との北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で一層の譲歩を迫られると懸念しているとみられ、日本は「TPPの決着を先延ばししたいのだろう」(政府関係者)と推し量る。カナダが早期の署名を拒めば、NAFTAで同国と一緒に対米共同戦線を張るメキシコにも波及しかねない。
日本政府は、TPP、日欧EPAいずれも19年中に発効にこぎ着けたい考え。今年7月に大枠合意した日欧EPAは、継続協議となった「投資紛争処理」を協定から切り離す方向で早期決着を図るが、分離後の取り扱いでは依然隔たりがある。関税分野のみ19年に発効できても、ビジネスのルール分野の発効にはEU加盟28カ国の手続きが不可欠で、ハードルは高い。
発効に不安要素が残る中、政府・与党間で17年度補正予算に盛り込む国内農業対策の規模をめぐる厳しい綱引きも予想される。自民党農林族には、チーズ生産者や木材業者支援をはじめとする日欧EPA対策を含め、例年と同規模の3000億円台を求める声が根強いが、財務当局は農業大国・米国のTPP離脱を念頭に予算圧縮を主張している。
茂木敏充経済再生相は24日、TPP・日欧EPA対策について「必要な予算が確保できているのかどうかが重要。この額だから合格、ダメというのとは若干異なる」と語り、一方的な積み増しには慎重な姿勢を示した。
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