図解
※記事などの内容は2017年2月3日掲載時のものです
政府と自動車業界が、トランプ米大統領の批判をかわすための対策の協議に入った。安倍晋三首相は3日、豊田章男トヨタ自動車社長と会談。10日の日米首脳会談に向け、官民の連携を強化していく。ただ、米大統領の狙いは、日本メーカーが米国に工場を新設して雇用を創出することとみられる。輸出用を中心に自動車の国内生産を減らしかねず、メーカー各社が難題を抱え込む恐れもある。
トランプ氏は、米国の雇用を奪うとして、メキシコに工場を新設して対米輸出する計画を持つ自動車メーカーを非難。トヨタもツイッターで攻撃し、日米間の自動車貿易にも批判の矛先を向けた。
これに対し、トヨタは今後5年間で米国に100億ドル(約1兆1300億円)を投資する計画を公表。うち6億ドルをペンス副大統領の地元インディアナ州の工場に充て、400人を新規雇用する。しかし、トランプ氏からトヨタに謝意を示す投稿はなく、日本の業界内で不安が募っている。
首脳会談などで日本側は、自動車業界が米国生産を拡大し、150万人の雇用に貢献していることを粘り強く説明する考えだが、トヨタなどが米国での雇用拡大を迫られれば対応に苦慮しそうだ。
自動車は投資を中長期で検討する業界。生産拠点を世界全体で考えるため、急ハンドルを切るような戦略転換は困難だ。トヨタの投資計画も内部で温めていた内容を打ち出したにすぎない。トヨタ幹部は「決まったことを粛々と進めるだけ。それ以上は難しい」と困惑している。
自動車の国内生産は約920万台(2016年)で日本経済の屋台骨を支える。国内販売と輸出がほぼ半分ずつで、米大統領が不満を示す対日貿易赤字の背景には、日本車の対米輸出がある。
メーカーにとって既に400万台規模に上る米国生産を増やすことは、国内生産の減少につながりかねない。「米国で雇用を生むことは、日本の雇用を移すこと」と関係者は頭を抱えている。
新着
会員限定