図解
※記事などの内容は2018年12月26日掲載時のものです
日本が脱退を決めた国際捕鯨委員会(IWC)は、捕鯨国を中心にクジラ資源の持続的利用を目指して発足したが、70年の歴史の中でクジラ愛護を唱える反捕鯨国の加盟が増加し、1頭たりとも捕獲を許さない完全保護に目的が変質した。日本などの巻き返しで、現在は捕鯨支持国と反対国の勢力が拮抗(きっこう)しているが、双方の議論は感情的対立に終始し、IWCは妥協点を見いだせない機能不全に陥っていた。
「結論ありきだ」。今年9月、ブラジルで開かれたIWC総会で日本の商業捕鯨再開の提案が否決されると、政府の交渉担当者は天を仰いだ。
IWCに加盟する89カ国のうち、捕鯨支持国は41、反捕鯨国は48と大差はない。しかし、総会で商業捕鯨再開などの「重要事項」を決めるには4分の3以上の賛成が必要。科学的な見地から商業捕鯨再開は可能と説明した日本の提案は、数の論理で否決された。
IWCは1948年、「クジラの保存と捕鯨産業の秩序ある発展」を目的に15の捕鯨支持国が集まって発足した。しかし、70年代の環境保護運動の盛り上がりを受けて反捕鯨の加盟国が急増。反対国が支持国の約3倍に達した1982年には商業捕鯨の一時停止が決まった。
鯨食文化を持つ日本とクジラを神聖な動物とみなす反捕鯨国の議論はかみ合わず、その後も平行線をたどったまま。日本が商業捕鯨再開に向けて科学的データをいくら提示しても、反対派から別の問題が指摘され、「ゴールに近づくとゴールが動かされる」(水産庁)状況が続いてきた。
日本は今後、オブザーバーとしてIWC改革に協力していく構え。しかし、日本という最大の捕鯨支持国を失ったことで、IWC内の勢力均衡が崩れるのは必至だ。日本脱退後のIWCがどう変質していくかに世界の注目が集まる。
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