図解
※記事などの内容は2018年4月6日掲載時のものです
政府は6日、今国会の最重要法案と位置付ける「働き方改革」関連法案を閣議決定した。労働者の命と健康を守る長時間労働の規制などが柱だが、野党は法案が残業上限と規定した月100時間は「既に過労死ライン」と批判。一方、与党内には経済活動への影響を懸念し、規制強化に反対する声が根強い。厚生労働省からは「味方がいない法案」(幹部)と自嘲する声も聞かれる。
残業時間の上限は年720時間、2~6カ月の平均では休日出勤を含めて80時間。過労死や過労による自殺が後を絶たないため、上限を労働基準法に明記し、違反した場合は罰則を適用することにした。2013年の同省の調査では、月80時間超の残業をしている人がいる事業所は全体の1.9%、100時間超は0.8%だった。
しかし、「80時間以内でも過労死が生じている」として、上限時間のさらなる短縮を求める意見も多い。法曹関係者からは、80時間の上限設定について「過労死・過労自死などの労働災害を招く基準にお墨付きを与えるものだ」と、長時間残業の合法化につながることを危惧する声も聞かれる。
一方、自民党の議論では一部議員が「空前の人手不足なので残業は増やさざるを得ない。どうやって乗り切るのか」と指摘。中小企業を残業規制の対象から外すべきだと強く主張し、法案の国会提出が遅れる一因となった。
政府は「中小企業の事情に配慮する」との付則を設けるなど法案を一部修正し、何とか自民党の了承を取り付けた。しかし、今度は野党側から「規制が骨抜きになる」と批判されている。
働き方改革法案は今後、国会で本格審議が始まる見通しだが、与党幹部は「総理のリーダーシップがあるから頑張っているが、政権が倒れれば法案もおしまいだ」と話す。森友学園問題などで安倍内閣の支持率が低下する中、野党も「看板法案」への批判を強める構えを見せており、今国会での成立は見通しにくい状況だ。
新着
会員限定