図解
※記事などの内容は2016年12月20日掲載時のものです
同一労働同一賃金の実現に向けた政府の指針案は、基本給や手当などについて同一企業内の正社員と非正規社員(派遣労働者除く)の不合理な格差是正を迫った。手当や賞与での改善が期待される一方、基本給は時間がかかりそうだ。
指針案は、「将来の役割への期待が異なる」という抽象的な説明だけで格差を放置することは認めず、きめ細かい賃金決定ルールに基づき判断するよう求めた。「従来は裁判にならないと分からなかった問題が整理された」(政府関係者)という。2、3年後とみられる指針導入をにらんで、前倒しで是正に乗り出す企業も出てきそうだ。
待遇差が比較的早く是正されると見込まれるのは手当だ。仕事内容に直接関係せず、見直しのハードルが低いためで、非正規への通勤手当支給などが進みそうだ。増床の必要がなければ、食堂や休憩室など福利厚生施設も区別なく使えるようになる可能性がある。
指針案は、業績などへの貢献度に応じ非正規にも賞与を支給するよう要求した。パートへの支給率は37%と、正社員の半分以下。非正規という理由だけで支給しないことは認められなくなる。
基本給については、構成要素を「職業経験・能力」「業績・成果」「勤続年数」に分類。各要素が正社員と非正規で同じなら支給額をそろえ、違うなら差をつけることを認める。例えば、スーパーに総合職として入社した正社員に経験を積ませる一環として期間限定でレジ打ちをさせる場合には、基本給の差を容認する。
労働問題に詳しい山田久・日本総合研究所調査部長は、指針案について「手当や賞与は踏み込んだが、基本給は『キャリアコース』の一環として正社員が配置される場合は非正規との格差を認めており、現状に配慮した」と分析する。
一方、何が不合理な待遇差かが伝わらなければ、企業は非正規に正社員と異なる仕事を安易に割り当て、正社員登用への道が遠のく恐れもある。
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