図解
※記事などの内容は2018年12月10日掲載時のものです
官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)の田中正明社長は10日午後、東京都内で記者会見し、自らを含む民間出身の取締役9人全員が辞任すると表明した。所管する経済産業省と報酬、投資手法をめぐり対立。「経産省の姿勢の変化により、目的達成が困難になった」と語った。日本経済の成長をけん引するため新産業の創出を目指した官民ファンドは、発足から3カ月足らずで機能停止の危機に陥った。
辞任するのは、田中氏のほか、取締役会議長の坂根正弘氏(コマツ相談役)、金子恭規副社長、佃秀昭専務、戸矢博明専務ら。取締役全11人のうち、経産、財務両省出身の2人を除き残務整理後、総退陣する。田中氏ら金融分野のプロの後任探しは難航必至で、組織運営が暗礁に乗り上げる公算が大きい。
田中社長は会見で、政府高官により報酬契約が破棄され、取締役会の議決が無視されたことは「日本が法治国家ではないことを示す」と強く批判した。さらに経産省が「国の意向を反映する官ファンド」への変質を求めたことが辞任に結び付いたと訴えた。
一方、世耕弘成経産相も同日午後会見し、今回の騒動をめぐる経産省の報酬案撤回などを「事務的失態」と謝罪。今後、既存投資の管理の安定や新経営陣の招聘(しょうへい)を急ぎ、混乱回避に努めると説明した。省内の追加処分は検討しない方針を示した。
JICは9月に発足。国内外の投資会社などと連携し、人工知能(AI)や創薬といった成長分野に資金を投じ、ベンチャー企業の育成など日本経済の競争力強化の一助になると期待されていた。
経産省は大手銀行グループ出身の田中社長ら経営陣に年額で1500万円の固定報酬、最大4000万円の短期業績連動報酬などを支給する案を提示した。しかし、首相官邸などの「高過ぎる」との批判を受けて11月に撤回した。
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