図解
※記事などの内容は2017年7月21日掲載時のものです
経済財政白書は2012年末を底とする景気回復が続く中、人手不足感の強まりにもかかわらず、賃金の伸びが鈍い背景を分析した。年功賃金と終身雇用に代表される日本型の雇用慣行の中で、労働者と企業経営者の双方が賃上げに慎重になったと指摘。こうした労使の姿勢が影響し、労働市場で不足感が強まっても賃金に反映されにくい状況になっているとの見解を示した。
有効求人倍率は4月に1.48倍と、バブル期の1990年7月に付けた1.46倍を上回る水準に上昇。一方で、86~91年に年平均3.6%だった名目賃金の伸びは、12~16年に同0.4%の低水準にとどまった。白書は「現在の労働分配率は02~08年の景気拡大期を下回っている」とし、「企業の賃上げ余地は大きい」と強調した。
しかし、バブル崩壊後の長期低迷により、労働者側は一つの企業での安定的なキャリア形成を優先し、賃金の抑制を受け入れる傾向が続く。企業側も市場環境の急変などで経営が悪化しても賃下げに理解を得るのは容易ではないと考えており、「労使のリスク回避的な姿勢が賃上げを抑制している可能性がある」と分析した。
今後の動向に関しては、「人手不足が深刻化し、企業が労働市場を通じて人材を受け入れる機会が増えれば、職務や能力に応じた賃金決定を行う必要性が高まる」と指摘。人手不足を機に働き方改革などを進めることで賃金の在り方が変化していくと予想した。
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