図解
※記事などの内容は2019年6月20日掲載時のものです
山下貴司法相は20日の法制審議会(法相の諮問機関)臨時総会で、親が子を戒めることを認める民法の「懲戒権」と無戸籍者の原因となっている「嫡出推定」について、それぞれ見直しを諮問した。通常は秋に開かれる総会を待たずに見直し論議に着手する。政権として夏の参院選に向けて取り組みをアピールする狙いもあるとみられる。
19日に成立した改正児童虐待防止関連法の付則には、施行後2年をめどに懲戒権の在り方を見直すと明記された。山下氏は20日の総会で、懲戒権について「児童虐待を行う親によって自らの行為を正当化する口実に利用されているとの指摘がある」と述べた。
民法822条は、子の教育や監護に必要な範囲で、親に懲戒権を認めている。2010年に始まった法制審部会でも削除や名称変更が検討されたが、「子の利益のため」との記述が追加されるにとどまった。当時の部会メンバーの一人は「以前は体罰を容認する空気があったが、今は変わっている」と指摘する。
嫡出推定は民法772条で、離婚後300日以内の女性から生まれた子は前夫の子とみなすと規定されている。前夫の子と認定されるのを避けるため出生届を出さないケースがあり、法務省の調査では、4月時点の無戸籍者827人のうち約8割が嫡出推定を原因に挙げている。
山下氏は「速やかに審議に着手していただきたい」と要請。法制審の今後の議論では、(1)夫(前夫)が子の出生を知ってから「1年以内」とされる嫡出否認の提訴期間の延長(2)夫にしか認められていない提訴権の母親や子への拡大-が主な論点となる。見直しが実現すれば、明治の民法制定以来初めてとなる。
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