図解
※記事などの内容は2017年6月15日掲載時のものです
「共謀罪」の構成要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法は、277の犯罪について計画・準備段階で処罰を可能にする内容で、刑法の「既遂処罰」の原則を転換するとの指摘もある。処罰対象や捜査範囲などの論点については、国会審議を通じて明瞭になったとは言い難く、運用に委ねられた面が強い。
処罰対象に関する政府の説明は変遷した。安倍晋三首相や金田勝年法相は当初、「組織的犯罪集団に限定した」と述べていた。だが、法相は6月に入って「組織的犯罪集団の構成員ではない周辺者の処罰もあり得る」と、答弁を変えた。「構成員および周辺者に限定される」と力説して理解を求めたが、対象が広がったのは明らかだ。
一般市民が捜査対象になる場合も判然としなかった。法相は「一般の方々は犯罪集団とかかわらない」との論理を展開し、「刑事告発されても一般市民は対象にならない」などと捜査実態に即さない答弁もあった。一般の団体であっても「犯罪を実行する団体に一変」があり得るとの見解を示しながらも、どういったケースが「一変」に該当するかは明確にならなかった。
過去の共謀罪は、重大犯罪の謀議に加わっただけで処罰される内容。政府はテロ等準備罪について、計画だけでなく金品の手配や犯行現場の下見などの「実行準備行為」を構成要件に追加したことで、憲法が保障した「内心の自由」の侵害にはつながらないと説明している。法相は「花見であればビールや弁当、下見であれば地図や双眼鏡を持っている」と主張したが、外観的な区別が難しいのは否めない。野党側では「捜査が内心に踏み込むことになる」との懸念が消えなかった。
犯行に及ぶ前段階で検挙するため、野党は「当局の行き過ぎた捜査を招くのではないか」と追及した。法相は「捜査権限に変更は無い。他の犯罪捜査と同様の方法で行われる」と繰り返すのみで、議論は平行線をたどった。
新着
会員限定