図解
※記事などの内容は2019年1月5日掲載時のものです
日ロ平和条約締結に向けた交渉が今月、本格化する。安倍晋三首相は下旬にロシアのプーチン大統領と会談し、6月の20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせたプーチン氏来日の際に具体的成果を得る段取りを描く。ただ、平和条約交渉の焦点である北方領土に関し、返還された場合の主権や在日米軍の扱いをめぐる双方の主張には隔たりが大きく、先行きは不透明だ。
首相は5日、山口県下関市での会合であいさつし、「ここからが正念場だ。私とプーチン大統領の手で必ず終止符を打つとの決意で交渉に臨む」と表明。21日にもモスクワで行う首脳会談に触れ「具体的な交渉を前に進めていきたい」と強調した。
首脳会談に先立ち、交渉責任者である河野太郎外相は14日、モスクワでラブロフ外相と会談する。河野氏は4日、「しっかり交渉したい」と語った。日本側は、歯舞群島、色丹島の返還と残る2島での共同経済活動などを組み合わせた「2島プラスアルファ」も視野に交渉に臨むとみられる。
ただ、両国が歩み寄るのは容易ではない。日本側は「領土が返還されれば主権が戻るのは当然」(政府高官)との姿勢。これに対しプーチン氏は、平和条約締結後の歯舞・色丹2島引き渡しを明記し、両首脳が交渉の基礎と位置付けた1956年の日ソ共同宣言について「どちらの主権下になるかは述べられていない」とけん制している。
さらにプーチン氏は、返還後の北方領土に米軍基地が置かれることを警戒し、日本側の回答がなければ「最も重要な決断をするのは難しい」としている。首相は、在日米軍がロシアと敵対する存在ではないと懸念の払拭(ふっしょく)に努めているが、溝は埋まっていないもようだ。
返還が具体化した場合、島民をはじめロシア国民の反発も予想される。首相は4日の年頭記者会見で、「住民に帰属が変わることを納得、理解してもらうことも必要だ」と指摘し、現地での共同経済活動の重要性を訴えた。
与野党には、首相がG20の際の首脳会談で解決への道筋を付けたとアピールし、直後の夏に衆参同日選挙に踏み切るとの見方も出ている。交渉の行方は首相の政権戦略を左右しそうだ。
新着
会員限定