図解
※記事などの内容は2017年2月10日掲載時のものです
【ワシントン時事】安倍晋三首相はトランプ米大統領との初の首脳会談で、「強固な日米同盟」を内外にアピールすることを最優先する。トランプ氏が通商分野で日本にも矛先を向ける中、日本の外交・安全保障政策の基軸とする日米同盟に動揺が生じている印象を与えたくないからだ。東シナ海で対立を抱える中国や、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の動きを横目に、首脳間の絆を強めることに注力する。
「今回の最大の狙いは、アジア太平洋の安全保障環境が厳しさを増す中、日米同盟は揺るぎないことを内外にはっきり示すことだ」。首脳会談に先立ち、同行筋はこう強調。首相も9日の羽田空港出発時、訪米の意義について「日米同盟が、さらに強固なものになっていくとのメッセージにしたい」と記者団に語った。
旧民主党政権時代、日米関係がぎくしゃくしたために、沖縄県・尖閣諸島の領有権を主張する中国の行動がエスカレートした-。安倍政権中枢ではこうした見方が支配的だ。首相はオバマ前政権との間で同盟深化に腐心し、「かつてないほど強固」と自負するに至ったが、貿易・為替政策で日本批判も展開するトランプ氏の登場で振り出しに戻った。首相周辺は「日米同盟が弱体化したと思われるだけで、周辺国に付け入る隙を与える」と緊張を隠せない。
訪米に向けた布石として、首相は1月中旬に米国と関係の深いアジア大洋州主要4カ国を歴訪。米国中心に地域の平和と繁栄を確保する立場をそれぞれの首脳と確認した。アジア政策が定まらないトランプ氏に、首相が「地域の代表」の形で会い、アジア重視の姿勢を保つよう促す狙いからだ。
首脳会談で、首相はアジア安定への米国の関与についてトランプ氏から言質を取りたい意向。通商分野での閣僚級協議設置の提案には、対立構図を際立たせないよう実質的な話し合いを先送りする思惑も見え隠れする。
首相は当初から、トランプ氏との早期会談にこだわっていた。トランプ氏の政治経験の浅さを踏まえ、「早い段階に会えば、日本の考えを刷り込むことが可能」(外務省幹部)との読みがある。
関係者によると、最初に候補に挙がった1月27日は、昨年11月のニューヨークでの初顔合わせの際に話題に上った日程。米側の都合でずれ込んだが、それでも大統領就任21日後のタイミングは異例の早さだ。
トランプ氏はフロリダ州の別荘に首相を招待。11日はゴルフを共にし、2日連続で夕食会を開く。異例の厚遇に政権幹部は「日本側が困ることは言わないだろう」と楽観的な見通しを示した。
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