図解
※記事などの内容は2016年11月9日掲載時のものです
日本政府は、米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利したことを受け、関係構築を急ぐ方針だ。トランプ氏が日本防衛の義務を放棄するかのような発言を繰り返してきたことから、日米同盟の重要性を理解してもらい、連携強化を働き掛ける考え。安倍晋三首相は、河井克行首相補佐官を14日からワシントンに派遣するなどして、次期政権と意思疎通を図る。
首相は9日、首相官邸で記者団に対し、「トランプ次期大統領と世界のさまざまな課題に共に協力して取り組んでいきたい」と表明。同時に「日米同盟は普遍的価値で結ばれた揺るぎない同盟だ。その絆をさらに強固なものにしていきたい」と同盟強化を呼び掛けた。河井補佐官の訪米時にも、トランプ氏のブレーンらに首相のこうした意向を伝達する。
政府が日米同盟強化に注力するのは、トランプ氏のこれまでの言動から、同盟の在り方の転換を迫られる可能性を警戒しているためだ。トランプ氏は選挙戦時、「公平な負担を払わないなら、われわれは日本を守れない」と述べ、在日米軍経費を日本が全額負担しない場合の米軍撤退を示唆。さらに、日本の核武装にも一時言及するなど、従来の米国のアジア外交と一線を画してきた。
仮にトランプ次期政権がこうした方向へ政策を見直せば、アジア太平洋地域の不安定化を招く可能性が大きく、政府関係者は「日米同盟を基軸とする日本外交が揺らぎかねない」との懸念を示す。
日本は、東・南シナ海で海洋進出を強める中国に対抗する上で米軍の抑止力を重視。韓国の朴槿恵政権が弱体化する中、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮への対応でも米国との協力が欠かせないとの立場だ。このため、トランプ氏側に対し、「日本が安全保障で『ただ乗り』している」との誤解を解き、連携強化を訴える。
トランプ氏が離脱に言及した環太平洋連携協定(TPP)についても、年内の米議会承認をオバマ政権に働き掛けるとともに、次期政権にも理解を促す考えだ。
一方、トランプ氏は過去に批判していた北大西洋条約機構(NATO)と「緊密に協力する」と述べるなど、発言に変化も見られる。政府は「選挙戦の発言と現実の政策は異なる場合もある」(外務省幹部)とみて、粘り強く説得を重ねる構えだ。
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