図解
※記事などの内容は2017年7月28日掲載時のものです
高レベル放射性廃棄物(核のごみ)に関する最終処分場の候補となり得る地域を示す地図は、「長い道のりの最初の一歩」(世耕弘成経済産業相)にすぎない。地下深くに廃棄物を埋設する最終処分の実現には、候補地の調査や施設建設などに数十年を要する。海外でも処分場の選定が難航する国は多く、実現に不可欠な国民の理解を得るのは簡単ではない。
最終処分では、原発の使用済み核燃料から出る放射性の高い廃棄物をガラスと混ぜて固体にし、地下300メートルより深い地層に埋める。日常生活から隔絶した地下空間に核のごみを封じ込める取り組みだ。
政府は今後、処分場の選定に向けた地質調査などを複数の自治体に打診する見込み。受け入れる自治体が出てきても調査期間は法律で20年程度と定められており、処分場を決めた後も施設建設から稼働までさらに10年程度かかる。
海外でも核のごみ問題への対応を検討する動きはあるが、処分場の建設にこぎ着けたのはフィンランドのみ。処分場所を決めたのもスウェーデンとフランスの2カ国にとどまる。米国は地元の理解が得られず、オバマ前政権がネバダ州での処分計画を中断。ドイツも選定作業が難航している。
政府は最終処分の安全性を強調するが、東京電力福島第1原発事故後、国の政策に対する国民の不信は高まっている。「超長期の安全性の検証は不可能だ」(有識者)などと放射性物質の漏えいへの懸念は根強い。
今回の地図は、恣意(しい)的な処分場の選定を避けるため科学的な観点だけを基準にした。しかし、実際の選定過程は土地の確保しやすさや人口の密集度合い、経済性など「社会的な側面も課題の一つ」(経産省)になる。地図は公表されたものの、国民の不信を取り除いて最終処分を実現する道筋はまだ見えない。
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