図解
※記事などの内容は2019年12月27日掲載時のものです
政府は、自衛隊の中東派遣で日本関係船舶が攻撃を受けるなど不測の事態が発生した場合、自衛隊法の「海上警備行動」で保護する方針だ。ただ、武器使用などの強制力を伴う措置は原則として日本籍の船を守る場合に限られる。隊員は被害船の船籍や事態の深刻さに応じた対処を求められ、とっさの判断に迷いが生じる可能性がある。
海上警備行動は、海上での人命・財産の保護、治安維持を目的とし、警察権の範囲内で武器使用や進路妨害などの実力行使ができる。緊急時は電話閣議を経て、防衛相が命令する。
一方、船舶は国際法上、船籍を登録している国の政府が保護することを原則とする「旗国主義」が公海上で適用される。旗国主義の例外である海賊対処を除けば、安易な実力行使は「国際法違反となる恐れがある」(外務省)。
中東シーレーン(海上交通路)には、外国籍船でも日本人が乗船していたり、日本向けの重要な貨物を載せていたりする船舶が多数往来する。日本船主協会によると、日本の海運会社が運航する船舶のうち日本籍の割合は10.5%にすぎない。
6月にホルムズ海峡付近で吸着機雷による攻撃を受けたタンカーはパナマ籍だった。日本政府は攻撃主体を特定していないが、旗国主義の下ではこうしたケースで自衛隊は実力行使できないことになる。
攻撃している船に大音量の警告や強い照明を浴びせるなど、強制力のない手段で対応は可能で、「護衛艦が近づくだけでも抑止力になる」(海上自衛隊幹部)とされる。ただ、現状では護衛対象が限定されるのは間違いなく、防衛省幹部は「国際法の壁は思いの外、高い」と吐露する。
防衛省は具体的な対処方針を「部隊行動基準」に定めるが、洋上で日本関係船舶かどうかを瞬時に見極めるのは困難。海自幹部は「現場は難しい判断が要求される」と懸念を示した。
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