図解
※記事などの内容は2018年4月4日掲載時のものです
陸上自衛隊のイラク派遣部隊の日報が見つかった問題をめぐり、陸自が昨年3月には存在を知っていたことが新たに判明し、安倍政権に激震が走った。1年間にわたり防衛相らに報告せず、日報の存在を隠蔽(いんぺい)していたことになり、シビリアンコントロール(文民統制)の根幹が揺らいでいる。参院外交防衛委員会は5日、小野寺五典防衛相が出席して審議を実施する。野党は政府を徹底追及する構えだ。
「一連の日報問題で国民に不信を持たれていることは大変申し訳ない」。小野寺氏は4日、防衛省内に急きょ記者団を集め、用意した文書を読み上げるとこう陳謝した。
◇昨年3月27日に把握
小野寺氏によると、事実を伏せたのは陸自研究本部(現・教育訓練研究本部)。稲田朋美防衛相(当時)からイラク日報の有無を確認するよう指示を受け、昨年2月末から同3月10日まで部内を調べて存在しないと回答。その直後の同3月27日に研究本部教訓課長が存在を把握したが、稲田氏ら政務三役と背広組と呼ばれる内局には報告しなかったという。
小野寺氏は、教訓課長が当時は南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題に対応していたことに触れ「イラクの日報は報告の必要があるかどうか、そこまで認識していなかったのだろう」との見方を示した。
しかし、存在を把握して直ちに報告しなかった理由としては説得力に乏しい。また、昨年3月以降、日報の存在の事実を陸自内でどこまで共有していたのか不明だ。隠蔽を誰が主導したのかも分かっていない。小野寺氏は記者団に「(他にも)いると思う」と指摘。今後、さらに調査を進める考えを示した。
当初の防衛省の説明では、研究本部は1月12日、陸上幕僚監部衛生部は1月31日に日報の存在をそれぞれ陸幕総務課に連絡。陸幕が統合幕僚監部に報告したのが2月27日で、防衛相への報告は3月31日だった。
防衛省は「ある程度、全体像を把握した上で大臣に説明したいと考えた」などと釈明している。イラク日報をめぐっては、野党議員が昨年2月16日、存在するかどうかを防衛省にただしていた。野党は「組織的隠蔽」の可能性もあるとみて、審議で経緯を厳しくただす構えだ。
防衛省が2018年度予算成立後の4月2日に公表したことも取り上げられそうだ。防衛省は予算審議と公表時期の関連を否定するが、野党には「(予算審議中だと)火に油を注ぐことになりかねず、影響を避けられるタイミングを選んだのではないか」との疑念もくすぶる。
5日の審議は日報問題を受け、野党の割当時間を計40分間増やし、当初の2時間20分から3時間に延ばして行われる。
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