図解
※記事などの内容は2018年5月8日掲載時のものです
学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、衆院予算委員会は10日、「本件は首相案件」と発言したとされる柳瀬唯夫元首相秘書官の参考人招致を行う。参院も同日に実施する方向だ。柳瀬氏は学園関係者との首相官邸での面会を認める見通しで、関与を否定してきた安倍晋三首相の答弁との整合性が焦点だ。計画が「加計ありき」で進んだとの疑惑について、どこまで真相が明らかになるか、柳瀬氏の答弁に注目が集まる。
柳瀬氏はこれまで獣医学部が設置された愛媛県や同県今治市の担当者との面会について「記憶の限りではお会いしたことはない」と説明。学園の加計孝太郎理事長と長年の友人である首相が、新設計画に関与したと疑う野党の追及に言質を与えてこなかった。
だが、愛媛県職員が作成した文書には、柳瀬氏が2015年4月2日に県と市、学園の3者と首相官邸で会い、「首相案件」と発言したとされる記載があることが発覚。同様の文書が農林水産省に保管され、内閣府と文部科学省が交わしたメールにも面会予定が記されていたことが判明するなど、面会を裏付ける資料が次々と明らかになった。
柳瀬氏は参考人招致で、国会では明言しなかった学園関係者との面会は認める一方、県と市の担当者については「周りにいる関係者の全てを把握しているわけではない」などの表現を検討しているとみられる。自民党幹部は「すとんと落ちる話になる」として、野党の追及をかわせると自信を示す。
柳瀬氏が面会を認めれば、その際の「首相案件」発言の有無が論点となる。柳瀬氏はこれまで「あり得ない」と否定しているが、国会でどう説明するかがポイントだ。首相は17年3月に疑惑が浮上した当初から「理事長から頼まれたことはないし、働き掛けていない」と関与を否定。新設計画を知った時期は学園が事業者に選定された17年1月20日だと答弁している。
ただ、新設計画をめぐり、前川喜平前文科事務次官は「行政がゆがめられた」と指摘。内閣府が文科省に「総理のご意向」と伝えた内部文書の存在も官邸の関与を示唆している。首相案件との発言が事実なら、首相は文書が作成された15年4月には計画を把握していた疑いが強まる。
立憲民主党幹部は「首相官邸に呼ぶのは通常の案件では考えられない」と指摘。与党の一部からも「学園を官邸に呼んだ時点で『加計ありき』と言われる」と懸念する声が出ており、首相が窮地に追い込まれる可能性も出てくる。
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